私の従者は…

「えっ?」
「可愛いすぎるよ。他の男に言うなよ」
「言わないよ」
「それもそれで…」
伊織が口に手を当てて目を逸らした。
「なんで目逸らすの?恥ずかしいの?」
これは伊織を揶揄う絶好のチャンスだと思い顔を見るために体を左右に動かす。
すると突然私の体が倒された。
「えっわぁっ」
「あまり調子の乗るとこうなりますよ」
そこには伊織の顔が間近に迫っていた。私はドキドキしながら目を瞑る。
「ふっ。初心ですね。それでは失礼します。紅茶ありがとうございました」
「あっちょっ…私のこと揶揄ったの?」
伊織はこっちもまともに見ず部屋を出て行った。
「なによ」
私はいまだ熱を引かない頬を押さえながらしばらくソファに座っていた。 
その日の夕食は私1人だった。メイドが次々と運んでくる夕食を食べながら先ほどのことを考える。伊織に次に会った時にはまるで何事もなかったかのように平然としていた。私はこんなにドキドキしているのに。
それを少し恨めしく思いながら端で立っている伊織の方を見ると相変わらず無表情のままだ。
(お嬢様と従者の関係でももう少し態度を柔らかくしても周りにはバレないはずなのに…)
「お口に合いませんでしたか?」
そんな事を考えているとメイドに声を掛けられた。