でも私は彼の名前を知らない。
──いや、知ってはいるけど読めないのだ。
彼から本を受け取って、ピッと本のバーコードを読み込んだら、次は図書カードをよみこむ。
ここ、ここに書かれているの。
彼のフルネームはね。
月見里翠。
正直最初はどこが名字でどこが下の名前かも分からなかったレベル。
それぐらい読めないのだ。
ここでカードをスキャンする時、何度名前とにらめっこしてもどう読めばいいかなんて閃かない。
聞こうと思ったこともあったけど、聞きずらいというか、今更名前が分からないなんて言えなかった。
それに彼は年下なのだ。
謎の年上のプライドまで邪魔してくる。
だからと私は彼を呼ぶ時は、
あのさ、とか
ねぇー、とか
そんなあやふやな呼び方をしていた。



