「ねぇ、翠くん」 剣道部なんでしょ?と続くはずだった言葉は遮られて、代わりに響いたのは 彼の手から本がバサバサ床へと落ちていく音。 バサバサなんて音じゃないね、ドンドコだ。 図書委員の仕事の一貫として、図書室で過ごす火曜日の昼休み。 ある男の子がかならず顔を見せてくれる。 「お願いします」 耳触りのいい声で 背は平均よりも、うんと高くて 少し明るい茶色の髪が特徴的で 横顔が綺麗な男の子。 退屈な図書委員の仕事の花に勝手にさせてもらっている最近の生きがい。これがいわゆる推しなのかも。