狂犬な彼は、図書室で私だけを甘く噛む。

「……本当に、これでいいの?」

日曜日。休日の繁華街で、私は城戸くんと繋いだ手をぎゅっと握りしめていた。今日は、私たちにとって初めてのデートだ。

図書室で交わした甘噛みから一週間。学校では彼の「俺のだ」アピールが凄まじくて、私の心臓は毎日がジェットコースターだった。

「何がだよ」

「だって、映画とか、流行りのカフェとか、城戸くんの行きたい場所じゃなくて……私の好きな、水族館だよ?」

城戸くんは、私の言葉にフッと笑った。

「お前が行きたい場所が、俺の行きたい場所。……わかんねぇの?」

耳元で囁かれた甘い声に、心臓が跳ね上がる。
はにかんで俯くと、彼が私の頬をそっと撫でた。

「ほら、行くぞ。遅れる」

水族館の中は、休日にもかかわらず家族連れやカップルで賑わっていた。青い光に包まれた大水槽の前で、私たちは並んで魚たちを眺める。

巨大なジンベイザメがゆったりと泳ぐ姿は、まるで深海にいるようで、心が洗われるようだった。

「すごいね、城戸くん」

「……ああ。ほんとに綺麗だ」

隣から聞こえた低い声に、私はドキッとした。
彼が「綺麗」と言ったのは、水槽の魚のことだろうか?

それとも……。

ふと、城戸くんが私の手を引いた。

「ほら、次行くぞ」

「うん!」

ペンギンのコーナーでは、よちよち歩く姿に二人で思わず笑い合った。可愛いイルカショーでは、水しぶきを浴びて「冷たい!」と私が騒ぐと、城戸くんは「子供かよ」と呆れながらも、タオルで優しく拭いてくれた。

「城戸くん、もう一枚、写真撮ろ?」

「またかよ。……いい加減、飽きただろ」

そう言いながらも、彼がスマホを向けると、ちゃんと私の隣に顔を寄せてくれる。

撮り終えた写真には、少し照れたような美月と、少しぶっきらぼうながらも優しい笑顔の城戸くんが写っていた。