狂犬な彼は、図書室で私だけを甘く噛む。

「き、城戸……っ!」

「おい、その手を離せよ。死にたいのか?」

城戸くんが一歩踏み出すだけで、男子たちは悲鳴を上げて逃げ出した。廊下に放り出された眼鏡を、城戸くんが静かに拾い上げる。

「……大丈夫か」

「う、うん……ありがとう、城戸くん」

「あいつら、ぶっ殺してくる」

「ダメだよ!」

私は咄嗟に彼の制服の袖を掴んだ。

「城戸くんが喧嘩したら、また先生に怒られちゃう。私のために、そんなの嫌だよ……」

城戸くんは足を止め、私を見つめた。
そして、溜め息をついて眼鏡を私の顔にかけ直してくれた。歪んだ眼鏡を直す彼の手は、驚くほど震えていた。

「……お前、本当にバカだな」

「えっ……」

「俺が怒られようが、どうなろうが勝手だ。でも、お前が泣くのは我慢できねぇんだよ」

その言葉の熱に、心臓が爆発しそうになる。
城戸くんは私の肩を掴んで、そのまま図書室へと連れて行った。