狂犬な彼は、図書室で私だけを甘く噛む。

平和な時間は、長くは続かなかった。

その日の放課後。私は図書室へ向かう廊下で、クラスの男子数人に呼び止められた。

「おい、佐藤。お前、最近城戸とつるんでるってマジ?」

「えっ、あ、えっと……」

「あんな凶暴な奴と一緒にいて、何されるかわかんねーぞ? もしかして、金でも巻き上げられてんのか?」

彼らはヘラヘラと笑いながら、私の眼鏡をひょいと奪った。

「や、やめてください……! 返して……!」

「あはは! 案外、城戸の彼女だったりして? こんな地味子のどこがいいんだか」

視界がぼやけて、涙があふれそうになる。
何も言い返せない自分が情けなくて、ただうつむくことしかできない。
その時だった。
「——誰が誰の彼女だって?」

凍りつくような、低い声。振り返る必要もなかった。
そこには、怒りで周囲の空気を歪ませるほどの迫力をまとった城戸くんが立っていた。