狂犬な彼は、図書室で私だけを甘く噛む。

「友達なんていねえよ。周りにいるのは、俺の名前を怖がってる奴か、利用しようとしてる奴だけだ」

その言葉に、胸の奥がチクリと痛んだ。

「……私も、同じです」

「あ?」

「私、地味だし、暗いから。みんな、私を避けてるっていうか、存在に気づいてないっていうか。だから、城戸くんが私に話しかけてくれたの、実はちょっと……嬉しかったんです」

一気にしゃべってから、私は顔が熱くなるのを感じた。
何を言ってるんだろう、私。相手はあの城戸くんなのに。
城戸くんは驚いたように目を見開いたあと、ふいっと顔を背けた。夕陽のせいか、彼の耳が少しだけ赤く見えた。

「……お前、変わってるな。俺が怖くないのかよ」

「最初は怖かったです。でも……絵を褒めてくれたから。本当は優しい人なんだなって」

「優しくなんてねぇよ。……バカじゃねぇの」

そう言い捨てながらも、彼はそれから、私の隣に座って本を読むようになった。彼が選ぶのは、意外にも難しい歴史小説や、美しい風景写真集。

無言のまま、でも確かに共有される時間。

私だけの聖域は、いつの間にか「二人だけの居場所」に変わっていった。