狂犬な彼は、図書室で私だけを甘く噛む。

「お前、名前は?」

「さ、佐藤、美月です……」

「佐藤か。お前、毎日ここで何してんの」

「図書委員の仕事とか…あとは、本を読んだり……」

彼は「ふーん」と短く返すと、バインダーを私に突き返した。そして、そのまま窓際の席にどさりと座り、机に突っ伏した。

「……騒ぐなよ。少し寝かせろ」

「えっ、ここで……?」

「保健室はババアがうるせえんだよ。
……ここ、静かでいいな」

それが、私と城戸くんの奇妙な関係の始まりだった。
それからというもの、城戸くんは放課後になると必ず図書室に現れるようになった。

最初のうちは生きた心地がしなかったけれど、彼は本当にただ寝ているか、時々窓の外を眺めているだけだった。


ある日のこと。


私は勇気を出して、ずっと気になっていたことを聞いてみた。

「あの、城戸くん。どうしていつも、ここに?」

「あ?」

「だって、友達とか、もっと楽しい場所があるんじゃ」

城戸くんは鼻で笑った。