「ふ〜、上手くいって良かったね!」
私、緋暮、周くんの三人は総会を後にした。
「全く、お二人とも無茶するんですから。特に緋暮さん、自分の足に刀を刺すなんて、何考えてるんですか」
「そやけど周くん、腕焼いた自分も大概やで?」
緋暮の足の傷は、周くんのおかげでもうすっかり治っていた。さすが周くん……じゃなくて!
何か……何かさ!?
「二人とも……私の知らないうちに、めっちゃ仲良くなってない!?」
「そうですか?」
「元から仲良しやったけどなぁ?」
あれほど喧嘩してた二人は、すっとぼけている。いつの間にか、お互いの呼び方も「緋暮さん」「周くん」になってるし!
「そや周くん、このペンダントもおおきにな」
緋暮が首からペンダントを外し、周くんに返す。彼が妖魔化していたとき、一瞬光った五芒星のペンダントだった。
あれ、周くんのだったんだ!
「これのおかげで自我取り戻せたわ」
「お役に立てたなら良かったです。緋暮さんにいただいた抜け殻は、椿さんに渡してしまいましたが……次の脱皮の際にはまた頂けますか?」
「ええで」
なんか!
「やっぱり仲良くなってるよね?!」
「そんなことないで」
「そんなことないです」
知らないところで仲良しになってたのは気になるけど……まぁ、良いか。
その時、近くから声が女の子の聞こえた。
「あの、すみません」
「あ……撫子ちゃん?」
現れたのは、長い黒髪の少女、北條撫子ちゃんだった。
「この度は、ご迷惑をおかけいたしました。謝って許されることとは思っていませんが……本当に、申し訳ございませんでした」
撫子ちゃんは指先を震わせながら、深々と頭を下げる。長い髪が床に付くのが見えて、慌てて肩を掴んで顔を上げさせた。
「そんな! 操られてたんだから、気にしないでよ。ねっ?」
「まぁ、元凶はうちの両親やからなぁ」
緋暮は一歩前に出た。
「縁談のこと、この前はキツく言いすぎたわ。ごめんなぁ」
「い、いえ」
縁談の話……。
少しだけ怖くなって見上げると、彼は私を見て微笑む。それだけでふっと心配が消えた。
前に緋暮は、撫子ちゃんと結婚はしないって、キッパリ言ってくれた。隣にいるのは、私だけだって。
あの時は私も、「バディとして」って言ったけど……。
「改めて、君と結婚するつもりはない。そやけど誠意には誠意で返さなあかんよな。――おおきに」
「っ……! はい!」
彼女は、憑き物が落ちたように清々しい顔になっていた。浄化したときに見た記憶を思い出す。
――撫子ちゃんは、本当は調妖院に来たがってたんだよね。
「ねぇ撫子ちゃん、調妖院においでよ。北部じゃ難しいなら、東部に来れば良いし。いつでも歓迎する!」
彼女は一瞬驚いたような顔をして、ふふっと笑った。
「私、これから修行に出て、性根を叩き直すつもりなんです。その後は……北部の調妖院に入ります、どんな手を使ってでも」
撫子ちゃんの瞳の中には、決意と不安が交差していた。
「私……いずれ北部の寮長になるつもりです。椿さんたちの役に立てるよう、協力させてはいただけませんか?」
撫子ちゃんのお人形さんみたいな瞳は不安げに揺れていた。
だから私はニッコリ笑って、手を差し出した。撫子ちゃんは目を見開き、おずおずと私の手を取った。それをぎゅっと握る。
「一緒に、頑張ろうね!」
「……はいっ」
