あやしき恋と陰陽師!

 西部陰陽寮の大会議室前。
 私と緋暮は、扉の前で聞き耳を立てていた。部屋の中からは司会をする周くんの声が聞こえてくる。
 
「本日は陰陽総会にお集まりいただき、ありがとうございました」

 陰陽総会というのは、東西南北の陰陽寮の代表たちが一同に集まる、一年で最も大きな会議だ。

 周くんは大人たちの中で、流れるような進行を行っている。
 これから起こることを知っているとは思えないくらい、堂々とした声だった。

「今回の総会はこれにて終了と――」

 緋暮はそこで、勢いよく扉を蹴破った。

「邪魔すんで〜」
 
 突如乱入した私たちに、視線が一気に集まる。

「君たち、いったい何を――」
「西部……いや、()()陰陽寮の、芦ヶ谷緋暮と言いますぅ。今日はこの場を借りて、芦ヶ谷家当主の代替わりを宣言しようかと」

 途端、周囲がざわめきに包まれる。緋暮のパパが立ち上がった。

「緋暮お前、本気で言うてんのか?」
「本気も本気や。老耄ジジイははよ当主の座、空けてもらえます?」

 私は会場を駆け回って、緋暮と周くんが作った資料を配り歩く。

「こちらの資料は西部陰陽寮の寮長、芦ヶ谷道蔵氏の告発書です! あやかし法第9条、第28条、第41条の違反……他にもたっくさん、非人道的な行為が確認されてます!」
「貴様ら、ふざけるのも大概にしろ!」

 緋暮のパパ――芦ヶ谷道蔵さんは立ち上がって刀を抜き、緋暮に切りかかる。

 ――キンッ!
 緋暮はそれを斬刻刀で受け止め、父親の刀を思いっきり弾いた。

 ――カシュッ!
 吹っ飛ばされた道蔵さんの刀は、天井に突き刺さる。
 
 そして緋暮は斬刻刀を、父親の喉元に突きつけた。
 どちらが強者なのかは、誰の目にも明らかだった。
 
「皮肉やね、あんたの"指導"のおかげで僕、西部最強の陰陽師になってしもてん。――おおきに」

 指導って強調したのは強烈な嫌味だろう。
 でも緋暮がされてきたことは真っ当な指導なんかじゃない、虐待だ。
 
「私は絶対許さないけどね!」

 被害を受けた張本人の緋暮は変なところ割り切ってるみたいだけど、到底許せることじゃない。
 隣に並んで、道蔵さんを睨みつける。

「どいつもこいつも……資料は捏造や! 芦ヶ谷当主にこんなことして、許されると……」
「――捏造? 私を見てもそう言える?」

 現れた着物の女性を見て、先ほどよりも大きなどよめきが会場に走った。