あやしき恋と陰陽師!

 シロは、緋暮の肩でチロチロと舌を出している。

「もし、そうだとしても!」
 
 彼女は拳を握りしめる。
 
「私は、沢山の人とあやかしを傷つけた!」

 ハァ、と溜息が横から聞こえた。

「そう思ってんなら、償いや。――あんたも昔、浄化つこてたって聞いた」
「そうなの!?」

 そういえばさっき、『貴女"も"浄化が使えるのね』って言ってた。
 彼女も浄化の使い手だったなんて……!
 
「罪と向き合って生きる方が、祓われるよりよっぽど苦しいやろからな」

 出会った当初なら綺麗事だと切り捨てていたようなことを、彼は真剣な顔で告げている。
 私も彼女の手を取った。
 
「私、あやかしと陰陽師が仲良くなれるような世界にしたいんです。どうか……手伝ってくれませんか?」

 呆気に取られたように口を開けた彼女は、眉を下げた。

「……呆れちゃうくらいのお人好しね」
「僕が好きになった子は、そういう子やねん」
「緋暮は、素敵な子を見つけたのね」

 見つめ合う緋暮と、彼の母親。
 親子というには遠い距離感。二人がやり直せるのかは、私には分からないけど……それでも、ハッピーエンドを目指したい。

 そして彼女は、私の手を握り返した。強大な妖力が混ざり合う。

「「【我は汝を還す者、揺蕩い巡る現世の花。罪を流すは慈悲の雨。赦しの灯火、いま宿せ――】」」

 辺り一帯がまばゆい光に包まれる。
 あたたかくて、優しくて、愛に溢れた光だった。

 目を開けた時には、彼女は嫋やかで美しいあやかしへと戻っていた。
 
「ありがとう、椿さん」
「こちらこそ!」

 緋暮は眉を上げる。
 
「今ので東部の妖魔、全部浄化できたみたいやで」

 これで、妖魔暴走は終わった。

「さて、陰陽寮に戻って――後始末つけよか」

 彼はにやりと、あくどい笑みを浮かべたのだった。