あやしき恋と陰陽師!

 ドサドサと、護符に焼かれた生物たちが地面に落ちる。
 しかしまばたきする暇もなく、木から飛び降りた彼女は閉じた傘の切先を突きつけ、襲いかかってくる。

 ――キンッ!
 傘と錫妖杖が重なり、高い音が鳴る。

 ――カキンッ!
 視線が交差する。
 
「ねぇ貴女、緋暮のことが好きなの?」
「っ!?」

 ――ガッ!
 得物がぶつかり合う音が、響き渡る。

「あやかしの血を引く者と、陰陽師が結ばれてッ! 幸せになれるとでも?!」

 凄みのある苛烈な視線だ。底知れない恨みや怒りが、濁った瞳に表れていた。

「恋なんてまやかしだわ! 人とあやかしが愛し合うことなんて、出来るわけないのよッ!」
 
 金の瞳が見つめる先は、私でも緋暮でもない。別の人――緋暮のパパだ。
 彼女もまた、憎しみに囚われている!

「出来るよ!」
「っ!?」

 叫びとともに、一歩踏み出す。
 怯んだ彼女がぐらりと倒れかけるのを見逃さず、懐から一枚の護符を取り出した。

「雪護符奥義――【不香(ふきょう)花牢(かろう)】っ!」
「何っ!?」

 ――シュウウウッ!
 彼女の体が氷の膜に覆われ、やがて氷像になっていく。
 
 使ったのは、雪女のおフユとあやかし講習で一緒に作った新しい護符だった。
 実戦は初めてだったけど、上手くいった!

 あくまで体の表面を覆うだけだけど、十分なはず。

「『蛇は変温動物。寒いのが苦手』って、前に教わったもんね」

 効果は抜群だったみたい。
 寒いと思うけど我慢してね、あとは浄化するだ、け――!?

 ――ザッ!
 背後から嫌な気配を感じ、咄嗟に転がる。
 私がさっきまで立っていた場所に、刀が振り下ろされていたのだ。

「緋暮!?」

 ゆらりと刀を構え直した、彼の瞳は――闇に染まっていた。