あやしき恋と陰陽師!

「緋暮っっ!」

 私は叫んだ。彼の前にいるのは黒幕――緋暮のママだ。

「緋暮を離してっ!」

 錫妖杖をバットみたいに振れば、彼女は大きく飛び退き、木の上に逃げた。

「ぐっ……!」

 苦悶に顔を歪める彼から、ひどく濁った妖力の気配が漂う。

「まさか、妖魔化が始まってる!?」

 巻きつかれて身動きの取れない彼は、歯を食いしばって呻いている。

「シロ! 離してよ!」

 ――シャーッ!
 シロに威嚇されたのは初めてだった。
 濁った妖力はシロにも纏わりついていて、操られてるんだと分かった。

 でも、どうして?
 契約あやかしのシロが緋暮に危害を加えるなんて、あり得ないはずなのに!

「うふふ、無駄よ」
 
 木の上から声がした。

「その白蛇は、私が生み出した眷属だもの」
「っ!?」
「こうなったらもう祓うしかないわね? でも貴女、そんなこと出来る?」

 彼女は口の端を歪めている。

「他の子の記憶で見たことあるわ……貴女、緋暮のバディね?」
「そうですけど! 皆に酷いことしたのは、あなたなのね!?」

 蹲っている彼から、微かに声が聞こえた。

「椿、ちゃん……逃、げ……」

 ――緋暮はまだ、妖魔化に抗ってるんだ!

「逃げない! バディを置いて、逃げるわけないでしょ!」
「ふっ、泣かせるわ、ねぇっ!」

 嘲るような声が聞こえた瞬間、上から何かが降ってきた。
 蛇、カエル、サソリ、蜘蛛――蠱毒だ!

 私は叫ぶ。

「熱護符っ!」

 ――ボオッッ!
 素早く取り出した護符を錫妖杖で突くと、蠱毒の大群が炎に包まれた。