あやしき恋と陰陽師!

「シロ!?」

 母親を締めていたはずのシロが、僕の前に飛び出してきた。振り下ろしかけていた刀を、すんでのところで止める。
 
 シロは僕に巻きつき、締めつけてくる。その瞳は酷く虚だった。
 まるで操られているかのように――。

「何でや、契約あやかしは主を傷つけられないはず!」
「気づかなかったのね。シロはこの髪から生まれたあやかし。私の眷属なのよ」
「何!?」

 母上の手に、新たな蛇が現れる。
 ――毒蛇か!

「うふふ。さっき、シロに構わず刀を振り下ろしていたなら、私ごと斬れていたでしょうにね」

 僕を締め付けるシロを見る。母が消えた後、あの地下牢で出会った蛇。

 忠実だった僕の、契約あやかし。
 それでも昔の僕なら、シロごと斬っていたはずだ。

 ――僕もずいぶん、腑抜けてもうたな。
 
「人にもあやかしにもなれない、可哀想な子。妖魔になって母さまと、全てを壊しましょう……?」

 母が手を離すと、毒蛇が僕に飛びかかってくる。
 首筋に、牙が突き立てられた。

「ぐっ……!」

 息ができない。激しい苦痛が肺を蝕み、全身に毒が巡っていく。
 僕の半分、あやかしの血が穢れていく。

 ――ははっ……妖魔化って、こんな感覚なんや。

 深い闇の中に、椿の幻が見えた。
 愛おしいその花に触れようと、手を伸ばすと――。

 椿の花は、首からボトリと地面に落ちた。

「あ……あぁ……!」

 触れられなかった手が、激しく震える。
 業火に灼かれ、雷に打たれ、水に沈むような激しい苦悶と、それ以上の憎悪が奥底から湧き上がってくる。

 何もかもが恨めしい。
 人も、陰陽師も、あやかしも、妖魔も……!

 その時、遠くで声が聞こえた。