あやしき恋と陰陽師!


 詠唱を終えた瞬間、撫子ちゃんを真っ白な光の粒が包んだ。後ろで、さっき緋暮が止めた無数の妖魔たちも浄化されていくのがわかった。

 気を失った彼女の身体を、木にもたれかけさせる。

「撫子ちゃんは、利用されてたんだよ」
「そやろなぁ……ごめんな」

 撫子ちゃんを見下ろしている彼から、ぽろりと声が溢れる。

 さっき刀で斬ろうとしたことに対する謝罪?
 それにしては腑に落ちない。緋暮って結構、自分の行動を割り切ってるタイプなのに。

「こんな危険なことして、椿ちゃんはアホやな」

 こっちを見た緋暮は……やっぱりなんだか、暗い顔をしてる。

「アホでいいし!」
「痛っ」
 
 だからほっぺをつねってやった。

 緋暮に、腑抜けた顔は似合わない。
 いつもの自信満々で、嫌味っぽくて、人を小馬鹿にしているような顔が一番なんだから。

「私は自分のしたいことをするの、後悔しないように」
「後悔、しないように?」

 緋暮は一瞬呆気に取られたような顔をして、それから笑った。笑ってくれた。

「ははっ! 僕も後悔、したないなぁ」

 歩み寄ってきた彼は、おもむろに私の手を取る。

「絶対今とちゃうけど、聞いてもらってええ?」
「え? なに?」

 緋暮は私の左手を引き寄せ――指先に口付けた。

「好きや、椿ちゃん」
「ふぇ?!」
 
「好き、大好き。僕のこと受け入れてくれて、嬉しかった。誰よりもまっすぐなとこ、素直なとこ、ちょっとアホなとこ、全部可愛い」

 熱っぽい瞳に当てられ、身体が燃えるように熱くなる。頭は沸騰しそうだった。
 金魚みたいに口をぱくぱくさせているうちに、私の手は解放される。

「椿ちゃんの気持ちは、妖魔暴走が終わってから聞かして」
「あ……ぇ、うん……」