中学二年のある日、お父様から彼との縁談について聞かされる。
天にも昇る心地だった。
それなのに……東部に派遣された彼の隣には、バディがいた。
朝霞椿。
ポニーテールの似合う、明るくて真っ直ぐな女の子。
彼女の調妖院の制服を見た瞬間――怒りとやるせなさが湧き上がってきた。
どうして、緋暮さまの隣に女が!
私は戦うことすら許されなかったのに!
私の方が先に、彼を好きになったのに!
――許せない。
欲しいものを全部手にしている彼女が、恨めしくて仕方なかった。
私は雁字搦めの庭に咲く、撫子の花。
あの子は自由に咲く、椿の花。
胸中で、黒い憎悪の炎が燃え盛る。
どうして、どうして、どうして!
『教えてあげましょうか? 芦ヶ谷緋暮の秘密』
そんな時、黒装束の女が声をかけてきたのだ。
『【魔よ妖よと煙を潜れば、蠱も毒も同じこと。相を秘めるが世の常ならば、燻る穢れもまた定め】」
――この女……人間じゃない!
呪文に抗えず、私は闇に飲まれた。
*
流れてきたのは、彼女の記憶。
撫子ちゃんは、緋暮のことが本気で好きだったんだ。
顔でも血筋でもなく、その強さに憧れていた。
握る手に慈しみと願いを込め、私は詠唱を紡ぐ。
「【我は汝を還す者、揺蕩い巡る現世の花。罪を流すは慈悲の雨。赦しの灯火、いま宿せ――!】」
天にも昇る心地だった。
それなのに……東部に派遣された彼の隣には、バディがいた。
朝霞椿。
ポニーテールの似合う、明るくて真っ直ぐな女の子。
彼女の調妖院の制服を見た瞬間――怒りとやるせなさが湧き上がってきた。
どうして、緋暮さまの隣に女が!
私は戦うことすら許されなかったのに!
私の方が先に、彼を好きになったのに!
――許せない。
欲しいものを全部手にしている彼女が、恨めしくて仕方なかった。
私は雁字搦めの庭に咲く、撫子の花。
あの子は自由に咲く、椿の花。
胸中で、黒い憎悪の炎が燃え盛る。
どうして、どうして、どうして!
『教えてあげましょうか? 芦ヶ谷緋暮の秘密』
そんな時、黒装束の女が声をかけてきたのだ。
『【魔よ妖よと煙を潜れば、蠱も毒も同じこと。相を秘めるが世の常ならば、燻る穢れもまた定め】」
――この女……人間じゃない!
呪文に抗えず、私は闇に飲まれた。
*
流れてきたのは、彼女の記憶。
撫子ちゃんは、緋暮のことが本気で好きだったんだ。
顔でも血筋でもなく、その強さに憧れていた。
握る手に慈しみと願いを込め、私は詠唱を紡ぐ。
「【我は汝を還す者、揺蕩い巡る現世の花。罪を流すは慈悲の雨。赦しの灯火、いま宿せ――!】」
