「女は淑やかに」
私――北條撫子は幼少の頃より、そう育てられてきた。
北條家は四大名家の一角。一族の者は全て、陰陽師になることが定められていた。
兄たちよりも妖力の強かった私は、調妖院に所属するつもりだった。……所属、したかった。
「女は淑やかに。男は強くあれ」
歴史だけ長い家のしきたりは、女が戦うことを許さない。
調妖院に入りたいと言った日には三食抜かれ、折檻された。
結局私は、親の命で向いてもいない詠暦院に所属させられることになったのだ。
北部陰陽寮の調妖院では、私より妖力で劣る兄弟たちが訓練している。
男というだけで、所属を選ばせてもらえる。それをずっと、恨めしく思っていた。
それでも諦めきれなかった私は、隠れて鍛錬を重ねた。
先生が兄たちに剣術を教えるのを眺め続け、目で盗んだ。
私も調妖院ならもっと活躍できたのに――と。
十一歳になった春のこと。
四大名家で最も格式高い芦ヶ谷家の跡取りのことを、お父様たちの噂話で知る。
同い年で、同じ四大名家。
そんな男の子がすでに、歴史ある西部の頂点に立っている。興味を持つのは当然だった。
お父様が西部に赴くことになった際には、「私も行きたい」とワガママを口にした。
残念なことに、彼は会食の席に来なかったけれど……迷い込んだ京都で、妖魔を祓う彼を偶然、私は目にした。
流れるような詠唱、見惚れるほどの刀捌き。
何一つ無駄のない動きの美しさに、知らず知らずのうちに涙が出てきた。
芦ヶ谷家の後継なら、北條とは比べ物にならない重圧を背負って生きているに違いないのに。
名家の息苦しさの一端は、私も知っていた。だからこそ、彼の強さに憧れた。
私――北條撫子は幼少の頃より、そう育てられてきた。
北條家は四大名家の一角。一族の者は全て、陰陽師になることが定められていた。
兄たちよりも妖力の強かった私は、調妖院に所属するつもりだった。……所属、したかった。
「女は淑やかに。男は強くあれ」
歴史だけ長い家のしきたりは、女が戦うことを許さない。
調妖院に入りたいと言った日には三食抜かれ、折檻された。
結局私は、親の命で向いてもいない詠暦院に所属させられることになったのだ。
北部陰陽寮の調妖院では、私より妖力で劣る兄弟たちが訓練している。
男というだけで、所属を選ばせてもらえる。それをずっと、恨めしく思っていた。
それでも諦めきれなかった私は、隠れて鍛錬を重ねた。
先生が兄たちに剣術を教えるのを眺め続け、目で盗んだ。
私も調妖院ならもっと活躍できたのに――と。
十一歳になった春のこと。
四大名家で最も格式高い芦ヶ谷家の跡取りのことを、お父様たちの噂話で知る。
同い年で、同じ四大名家。
そんな男の子がすでに、歴史ある西部の頂点に立っている。興味を持つのは当然だった。
お父様が西部に赴くことになった際には、「私も行きたい」とワガママを口にした。
残念なことに、彼は会食の席に来なかったけれど……迷い込んだ京都で、妖魔を祓う彼を偶然、私は目にした。
流れるような詠唱、見惚れるほどの刀捌き。
何一つ無駄のない動きの美しさに、知らず知らずのうちに涙が出てきた。
芦ヶ谷家の後継なら、北條とは比べ物にならない重圧を背負って生きているに違いないのに。
名家の息苦しさの一端は、私も知っていた。だからこそ、彼の強さに憧れた。
