あやしき恋と陰陽師!

「へぇ、よう知っとるやん。そやで」

 沈黙ののち、僕はゆっくりと脚を組み替えた。

「否定しないんですね」
「言い振らす気ないんやろ? 保科くんはどうせ、椿ちゃん側につくやろし」
「お見通しですか。それにその言い方……椿さんも既に知っている、と」

 頷く。これ以上の化かし合いは無意味だ。

「白い髪に金の瞳。芦ヶ谷さんの正体を知り、かつ蠱毒術に長けた女の妖魔に……心当たりはありますか?」

 その女の特徴は、僕の本当の姿と全く同じ色だった。

 そして、蠱毒術。
 蠱毒によく使われるのは、サソリ、蛙、蜘蛛、そして――蛇だ。

「心当たりありまくりやわ。その女は蛇のあやかし――僕の母親やろなぁ」
「っ!?」

 保科くんは驚きに目を見開くが、すぐに平静を取り戻したようだった。

「そうですか……ぼくも一つ、聞いて良いですか?」
「ええよ」
「芦ヶ谷さんが隠しているその傷。いい加減、治させてもらっても?」

 彼の視線の先は、僕の陰陽師の制服の中。
 少し前にカマイタチにやられた傷の話ではない。身体中の古傷のことだろう。

「【令百由旬内、無諸衰患。左に廻せ、其の円環――妖脈遡及】」
 
 光が僕を包むと、全ての傷が綺麗さっぱり消えたのが分かった。
 
 完璧以上の治療をされてしまえば、認めるしかない。
 保科くんは、一流の治癒師だと。
 
「おおきに。古傷やのに、いつ気づいたん?」
「初めて会った時から。あまり治癒師を舐めないことですね」
「やなやつぅ」

 視線が交差する。
 ついこの間まで互いに疎んでいたというのに、何故だか……共犯者になったみたいな感覚だった。
 
 きっと彼も同じだろう。それがおかしくて、愉快だった。

 対等に思える同年代の術師は、これで二人目だ。
 椿ちゃんと、保科くん。
 こういうのもなかなか、悪くない。
 
 そう思った瞬間だった。

 ――ゴオオオッ!
 その時、地面が大きく揺れる。
 全身にぞわりとした嫌な予感が走る。ドロドロに濁った、穢れた妖力の気配だった。

『――大変にゃッ!』