*
ぼくの記憶を覗いたその女は、ニタリと笑う。
「――あら、素敵な恋物語ね。でも貴方の中にはもっと闇があるはず……見せて頂戴な」
――チクリ。
足首に何かが突き刺さる。ぼくは再び、深い闇の中に沈められた。
*
それからぼくは、正式に治癒師として扱われるようになった。
周囲からの眼差しに尊敬が含まれるようになったけど、もはやどうでも良かった。
唯一の誤算は、椿さんとのバディを解消させられたことだ。
「治癒師は治癒に専念するべき」という理屈は正しいけど、ソロ活動することになった椿さんが浄化に苦戦している姿を見るたび、もどかしかった。
芦ヶ谷緋暮が東部にやってきて、彼女とバディを組むことになったのは、そんな時だ。
初対面の芦ヶ谷緋暮は、嫌なやつだった。
何より面白くなかったのは、彼と組んだ途端に椿さんの浄化戦績が上がったこと。
彼女の夢を手伝うのがぼくじゃなくて、あの男だってことが気に食わなかった。
更に二人が同じクラスに通っていると知って、縮まらない歳の差に悔しくなった。
段々と距離を縮めていく二人を、指を咥えて見ていることしか出来ない。
椿さんが彼に笑いかける姿を見るたびに、苦しかった。芦ヶ谷さんの方だって――。
そこでふと、初対面の芦ヶ谷緋暮が脳裏に浮かぶ。
多分これは、治癒能力を持つぼくしか気づいていないこと……彼の身体には、無数の傷の気配がある。
そして、彼の纏う妖力にも違和感があった。
芦ヶ谷さんは決して、ぼくの治療を受けようとはしなかった。
彼が何か秘密を抱えているのは、一目瞭然だった。
その時、意識の上から女の声が聞こえた。
『芦ヶ谷緋暮が憎いのね?』
ぼくの記憶を覗いたその女は、ニタリと笑う。
「――あら、素敵な恋物語ね。でも貴方の中にはもっと闇があるはず……見せて頂戴な」
――チクリ。
足首に何かが突き刺さる。ぼくは再び、深い闇の中に沈められた。
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それからぼくは、正式に治癒師として扱われるようになった。
周囲からの眼差しに尊敬が含まれるようになったけど、もはやどうでも良かった。
唯一の誤算は、椿さんとのバディを解消させられたことだ。
「治癒師は治癒に専念するべき」という理屈は正しいけど、ソロ活動することになった椿さんが浄化に苦戦している姿を見るたび、もどかしかった。
芦ヶ谷緋暮が東部にやってきて、彼女とバディを組むことになったのは、そんな時だ。
初対面の芦ヶ谷緋暮は、嫌なやつだった。
何より面白くなかったのは、彼と組んだ途端に椿さんの浄化戦績が上がったこと。
彼女の夢を手伝うのがぼくじゃなくて、あの男だってことが気に食わなかった。
更に二人が同じクラスに通っていると知って、縮まらない歳の差に悔しくなった。
段々と距離を縮めていく二人を、指を咥えて見ていることしか出来ない。
椿さんが彼に笑いかける姿を見るたびに、苦しかった。芦ヶ谷さんの方だって――。
そこでふと、初対面の芦ヶ谷緋暮が脳裏に浮かぶ。
多分これは、治癒能力を持つぼくしか気づいていないこと……彼の身体には、無数の傷の気配がある。
そして、彼の纏う妖力にも違和感があった。
芦ヶ谷さんは決して、ぼくの治療を受けようとはしなかった。
彼が何か秘密を抱えているのは、一目瞭然だった。
その時、意識の上から女の声が聞こえた。
『芦ヶ谷緋暮が憎いのね?』
