「そんな……」
緋暮の語る過去は、あまりに壮絶だった。
腕の中、すぐ近くで見つめ合う。
普段の黒髪黒目とは全く違う、真っ白な髪と金色の瞳。
「でも、姿を操れるなら何で、今日はその姿なの? 出張って言ってたのは?」
「出張は嘘。月食の日だけは、必ず元の姿になってしまうから」
肩をすくめた緋暮は、己の白髪を摘んでみせた。
「ねぇ、前に話したよね。私が昔、あやかしの男の子に助けられたことがあるって。あの子は……緋暮だったんだね」
「やっと気づいたんや?」
彼は悪戯っぽく笑った。
思えば牛鬼に追われたあの日も、月が赤かった。今日と同じ、皆既月食。
あの時の少年――緋暮も今と同じ、白髪に金の瞳をしていた。
「ずっとお礼を言いたかったの。助けてくれてありがとう、って」
「僕もびっくりしたわ。あの時泣いてた女の子が気づいたら陰陽師になっとるし、おまけに『浄化する!』なんて言わはるんやから」
冗談めかした緋暮が、私のポニーテールに指を通して弄る。
「緋暮が助けてくれたから……私は、あやかしと仲良くなりたいって思うようになったんだよ」
「……なぁ、ほんまに仲良く出来ると思ってる?」
金の瞳に、暗い影が差し込む。
「妖魔を祓うって、人間で言うたら処刑してるのと変わらへん。半分あやかしの僕は、いわば同族殺し。今更仲良くなんて、悪い冗談やろ。僕はあやかしにも、人間にもなり切れへんのにな」
緋暮は自嘲する。
「そんなこと……っ!」
反論しようとした私を、緋暮は制止する。金の瞳は、どろりしていた。
「僕やっていつか、妖魔に堕ちるかもしれへん。もしそうなったら……椿ちゃんが僕のこと、祓ってくれる?」
――私が、緋暮を祓う?
「絶対絶対、祓わないっ!」
緋暮の語る過去は、あまりに壮絶だった。
腕の中、すぐ近くで見つめ合う。
普段の黒髪黒目とは全く違う、真っ白な髪と金色の瞳。
「でも、姿を操れるなら何で、今日はその姿なの? 出張って言ってたのは?」
「出張は嘘。月食の日だけは、必ず元の姿になってしまうから」
肩をすくめた緋暮は、己の白髪を摘んでみせた。
「ねぇ、前に話したよね。私が昔、あやかしの男の子に助けられたことがあるって。あの子は……緋暮だったんだね」
「やっと気づいたんや?」
彼は悪戯っぽく笑った。
思えば牛鬼に追われたあの日も、月が赤かった。今日と同じ、皆既月食。
あの時の少年――緋暮も今と同じ、白髪に金の瞳をしていた。
「ずっとお礼を言いたかったの。助けてくれてありがとう、って」
「僕もびっくりしたわ。あの時泣いてた女の子が気づいたら陰陽師になっとるし、おまけに『浄化する!』なんて言わはるんやから」
冗談めかした緋暮が、私のポニーテールに指を通して弄る。
「緋暮が助けてくれたから……私は、あやかしと仲良くなりたいって思うようになったんだよ」
「……なぁ、ほんまに仲良く出来ると思ってる?」
金の瞳に、暗い影が差し込む。
「妖魔を祓うって、人間で言うたら処刑してるのと変わらへん。半分あやかしの僕は、いわば同族殺し。今更仲良くなんて、悪い冗談やろ。僕はあやかしにも、人間にもなり切れへんのにな」
緋暮は自嘲する。
「そんなこと……っ!」
反論しようとした私を、緋暮は制止する。金の瞳は、どろりしていた。
「僕やっていつか、妖魔に堕ちるかもしれへん。もしそうなったら……椿ちゃんが僕のこと、祓ってくれる?」
――私が、緋暮を祓う?
「絶対絶対、祓わないっ!」
