あやしき恋と陰陽師!

 九歳になった日のこと。
 父上は僕を、芦ヶ谷の"人間"として後継者に指名した。

 陰陽寮に正式に所属してからは、父親の命令で全国の妖魔を単騎で祓いに行くことも増えた。喜んでいいのやら悲しんでいいのやら、徹底的に鍛えられた僕は誰よりも強くなっていた。

 そして……西部陰陽寮というのは、妖魔より妖魔みたいな人間がウヨウヨしている、陰湿な環境だった。

 それでも流れる忌まわしい血のおかげか、勢力闘争への適性はあったらしい。
 家の力だと言われれば実力を見せつけて、裏で見下すような口を叩かれれば、さらに苛烈な口撃で返す。

 こうして僕はやがて魑魅魍魎(ちみもうりょう)蔓延(はびこ)る西部で、自分の地位を確立したのだった。
 
 
 しかし中学二年になったばかりのある日、東部陰陽寮への派遣を父上から告げられる。
 
 東部のスパイ。
 つまりそれが父上の求める役割だとすぐに理解した。

 こうして僕は五月という半端な時期に転校し……椿ちゃんと出会ったのだった。