あやしき恋と陰陽師!

 妖力操作をマスターし、黒髪黒目に見た目を変えることができるようになったのは、五歳の頃。
 僕はようやく牢から出され、芦ヶ谷の陰陽師として徹底的に教育されることになる。

 教わったことを間違えるたび、激しい折檻が待っていた。完璧しか認められない環境だった。勉強する以外、道は残されていなかった。

 それから二年、齢七つにして大人の陰陽師と同量の知識を覚えた僕に、父親は次なる教育を施すことを決める。

 結界の中に僕を閉じ込め、生け取りにした妖魔とひたすら戦わせることにしたのだ。
 戦って、戦って、戦う。何とか食らいついていったものの、日ごとに戦う妖魔のレベルは上がっていった。

 もしも妖魔に負ければ、次に処分されるのは自分だ。
 
 その日のノルマを終えたと思えば、今度は父親が直接切り掛かってくる。
 妖力を纏った刃物で切られた傷は、妖力を持つものにしか見えない。それを良いことに、僕の身体は傷だらけにされていった。
 
 それでも地獄みたいな特訓を重ねていれば、父親の剣筋も完全に読めるようになってくる。
 ひたすら躱して、機嫌を損ねない程度にわざと食らう。
 受ける傷すら操れるようになった僕は、気を抜いてしまったのかもしれない。

 ある日の稽古の終わり際、ずっと気になっていたことを尋ねてしまったのだ。

「母上は、どこに行かはったのですか」

 瞬間、目の前の男から尋常じゃないほどの殺意が放たれる。そして妖力すら纏っていない()()の切先が、僕に向かって襲いかかってきた。

「……っ!?」
 
 身体と首を捻って回避したものの、開いたままの口の下唇と、右耳に鋭い痛みが走る。

 血が地面を濡らす。耳の傷はかなり深いようで、千切れたかもしれないと思った。
 
 後ろに飛び後ずさった僕を一瞥だけして、父は吐き捨てる。
 
「……あの女は妖魔に堕ちたから、祓ったった」

 父は刀の先から血を垂らしながら去っていく。

 ……母上は、妖魔になって死んだ?

 僕は呆然と立ち尽くす。
 
 ――半人半妖。
 僕はあやかしにも人間にも属せない、中途半端な化け物だ。