「は〜! ついに今夜が、皆既月食かぁ」
私はぐぐっと腕を伸ばす。
皆既月食。
それは、妖魔の力が一際強くなる日。だからこそ当日は、詠暦院も調妖院も大忙し……の予定なんだけど。
「僕は居らへんのやから、浄化はあかんよ。今晩だけは祓うことに専念すること。ええね?」
「わ、分かってるってば!」
「ほんまに分かっとる??」
よりにもよって陰陽師が最も忙しくなる月食の日、緋暮は西部にどうしても外せない出張が入ってしまったらしいのだ。
浄化を使うのは緋暮がいるときだけ。
一人じゃ無理があるって分かってるからこそ、素直に彼の言うことに従おうと思っていた。
おでこをツンツンとつついてきた緋暮は後ろを振り向き、周くんを見た。
「心配や……なぁ保科くん、今日だけ椿ちゃんに着いてってくれへん?」
「構いませんよ? 椿さんがぼくのところから、帰ってこなくなるかもしれませんけど」
「おもろい冗談言うやん、関西やったら大ウケやで」
男子二人の間には、相変わらずバチバチと火花が散っている。
「もう、無茶言わないの! 周くんは待機組なんだってば」
月食とは、陰陽師の怪我人が最も出やすい日でもある。貴重な治癒師である周くんは、万全を期すために陰陽寮で待機命令が出ていた。
「それじゃ、周くんも頑張ってね! 行くよ緋暮」
周くんにそう言い残すと、緋暮の首根っこを掴み、ロビーの隅に連れて行く。
「はぁ。僕はこれから出張やけど……くれぐれも、くれぐれも! 今日だけは浄化を控えること!」
「分かってるってば、無理はしないから」
疑わしげな視線を向けてきた緋暮だったけど、結局そのまま陰陽寮を出て行ったのだった。
私はぐぐっと腕を伸ばす。
皆既月食。
それは、妖魔の力が一際強くなる日。だからこそ当日は、詠暦院も調妖院も大忙し……の予定なんだけど。
「僕は居らへんのやから、浄化はあかんよ。今晩だけは祓うことに専念すること。ええね?」
「わ、分かってるってば!」
「ほんまに分かっとる??」
よりにもよって陰陽師が最も忙しくなる月食の日、緋暮は西部にどうしても外せない出張が入ってしまったらしいのだ。
浄化を使うのは緋暮がいるときだけ。
一人じゃ無理があるって分かってるからこそ、素直に彼の言うことに従おうと思っていた。
おでこをツンツンとつついてきた緋暮は後ろを振り向き、周くんを見た。
「心配や……なぁ保科くん、今日だけ椿ちゃんに着いてってくれへん?」
「構いませんよ? 椿さんがぼくのところから、帰ってこなくなるかもしれませんけど」
「おもろい冗談言うやん、関西やったら大ウケやで」
男子二人の間には、相変わらずバチバチと火花が散っている。
「もう、無茶言わないの! 周くんは待機組なんだってば」
月食とは、陰陽師の怪我人が最も出やすい日でもある。貴重な治癒師である周くんは、万全を期すために陰陽寮で待機命令が出ていた。
「それじゃ、周くんも頑張ってね! 行くよ緋暮」
周くんにそう言い残すと、緋暮の首根っこを掴み、ロビーの隅に連れて行く。
「はぁ。僕はこれから出張やけど……くれぐれも、くれぐれも! 今日だけは浄化を控えること!」
「分かってるってば、無理はしないから」
疑わしげな視線を向けてきた緋暮だったけど、結局そのまま陰陽寮を出て行ったのだった。
