あやしき恋と陰陽師!

「包帯、貸してっ」

 正直手先は不器用な方だ。
 それでも出来る限り丁寧に、解けないように巻いていく。
 近くで見るとより傷の凄惨さが分かって、胸が痛くなった。
 
「手当は終わったよ。それじゃあ私、戻るね」

 部屋から出ようと立ち上がった瞬間、手首が掴まれる。
 
「……聞かないんや? この傷が何なのか」
 
 私を掴んだ彼は、俯いている。
 
「そりゃ、気になるよ。でも、聞いてほしくなさそうだから」
「……は〜〜。こういう時だけ鋭いんやから」

 緋暮はぽつりと溢した。

「変なもん見せてもうてごめん。気色悪いやろ、こんな傷跡」
「そんなこと! これっぽっちも思ってないっ」

 彼の顔は見えない。
 だから私は、声を張り上げた。
 
「いつか! いつか緋暮が私に話してもいいって、そう思ったらっ……その時、教えてよ」

 返事を求めてるわけじゃない。あくまで私の意思表明。

 今、これ以上私に出来ることは無い。あとは彼を信じるだけだ。

「……じゃあね」
「待って」

 再び袖が引っ張られ、引き留められる。

「やっぱバディ解消はナシ、って言ったら……怒る?」

 彼はゆっくり顔を上げた。

 目があって、逸らされる。

 だから私は、彼の頬をむにゅっと引っ張ってやった。

「怒る」
「いたた」
「なーんて、嘘だよ」

 指を離すと、彼の頬はちょっとだけ赤くなっていた。

「私も、緋暮がいい。この前は無茶してごめんね」

 私も謝ると、緋暮も立ち上がる。そして私の頬をつねった。

「いひゃい!」
「これでおあいこや」

 緋暮はくしゃりと笑った。

「僕もごめん。――椿ちゃん、またバディに戻ってくれはる?」
「……うん!」

 月の光が、優しく私たちを包んでくれた。