あやしき恋と陰陽師!

「……そんな顔、させたいわけじゃなかったんですけどね」

 私の手の上に、周くんの手がそっと重ねられる。

「椿さん、ぼくじゃダメですか」

 ミルクティー色の眼差しに、思わず息を呑む。
 
「ぼくがバディじゃダメですか? ぼくの方が付き合いも長いし、治癒能力だってあります」
「……でも。治癒師は貴重だから、戦いの前線には出せないって」
「そんなの上が勝手に言ってることでしょう。そもそも危険な任務は、エースから回されていくんですよ? 治癒師が着いていくのはむしろ、合理的措置だと思います」

 私の懸念に、淀み一つなくすらすらと答えていく周くん。

 咄嗟に出た前線がどうって話は、本当はただの時間稼ぎに過ぎなかった。
 それすらきっと、彼は気づいていたと思う。
 
「でも……」

 頭と心で、本音と建前がぐちゃぐちゃになりそうだった。
 
「すぐに返事をしなくても大丈夫です」

 言葉に詰まった私を見て、周くんは苦笑いをした。

「本当は椿さんは、あの人とまだ組んでたいんだって分かってます。だけど……ぼくのことも、真剣に考えてみてくださいね」

 *

 陰陽寮に戻り、周くんと別れた。
 彼は間違いなくこの東部陰陽寮で、私の一番の理解者だ。だからこそ、その優しさに応えられない自分が嫌になった。

 とぼとぼと一人、陰陽寮の敷地内の外を歩き回っていると、足元を細長くて白い何かが横切った。

「シロ……?」

 私の足に絡みついてきたのは、緋暮の契約あやかし。
 少し前までタクシーみたいに私を背に乗せてくれていた蛇、シロだった。