あやしき恋と陰陽師!

 新しいバディが彼だと理解して、心におもりを付けられたみたいな感覚がした。

「ここに来たのがぼくで、ガッカリしましたか」
「……そんなこと」
「芦ヶ谷さんが来るかもって、思ったんですね」

 全部、見抜かれてる。
 私がさっきまで期待していたこと。
 
 犬飼さんがサプライズで緋暮を呼んでくれていて。
 一緒に戦って、最後には仲直りしてまたバディに戻る。

 そんな都合の良すぎる妄想を、心のどこかでしていた。
 
 空気が重たい。周くんと居て、こんなに気まずいと思ったのは初めてだった。

「……先にあちらを片付けましょうか。椿さん、浄化を」
「え……?」

 彼は当たり前のように「浄化を」と言った。

「浄化しても、いいの?」
「勿論」

 促されるまま、浄護符を取り出す。深呼吸した私は、結界の中の妖魔へと錫妖杖を翳した。

「【……我は汝を還す者、揺蕩い巡る現世の花。罪を流すは慈悲の雨。赦しの灯火、いま宿せ】」

 もっけを包んだのは、いつもよりも弱い光。それでも充分だったようで、みるみるうちに邪気が剥がれていく。
 
 張り詰めていた糸が急に緩むみたいに、身体から力が抜けた。
 浄化術を使ったという事実に、安堵と恐怖と喜びと、自責の念がないまぜになる。
 
「浄化、しちゃった」
「――バディ解消の理由はやはり、浄化だったんですね?」

 大きく息を吐いた周くんに見つめられる。
 
「椿さんがしたいことをして良いんです。何があってもぼくは全力でサポートします。怪我してもすぐ、治しますから」

 そう言った彼は「まぁ、ホントは怪我はしてほしくないですけど」と小さく笑った。

「でも……今回は良くても、次も上手くいくとは限らないんだよ。もし浄化に失敗したら、バディまで巻き込んじゃうかもしれない」
「構いません。好きなだけ巻き込んでください、そのためのバディです」
「そのための、バディ」

 その言葉が嬉しかった。
 だけど同時に、底からじんわりと迫ってくる苦しさにも気づいてしまう。

 鼓動が脈打つ先は、こんなにも優しい言葉をかけてくれる周くんじゃない。

 脳裏に浮かぶアイツの不遜な笑み。
 頭から追いやろうとしても、どうしたって考えてしまう。
 ――私はこの言葉を、緋暮から聞きたかったんだ。