「椿はまだ浄化に拘りたいのか?」
「……分かんない」
珍しく気遣わしげな犬飼さんに対し、私はそう絞り出すのが精一杯だった。
カマイタチの件は、無茶した私が悪い。だけど……。
猫又のニャーコ、橋姫、雪女のおフユ、妖狐のコンヤ。今まで浄化したあやかしたちの顔が浮かんでくる。
どうしても、どうしても浄化を諦められなかった。
黙ってしまった私の胸中を察したんだろう。犬飼さんは、励ますように肩を叩いてくれる。
「そうだよなぁ。だが、浄化を捨てる決断ができない以上、ソロ活動はさせられない。当面は別の陰陽師と臨時バディを組んでもらうことになるが、いいな?」
――緋暮とじゃないと嫌だ。
なんて、言えるはずもない。だってこれは、私が蒔いた種だから。
「……うん」
他にどうしようもなくて、本音を押し殺して頷いたのだった。
*
翌日。
あんな別れ方をしたけど、学校じゃ席は隣だ。
どんな顔して会えばいいのかな、なんて考えながら登校したけど……緋暮は休みだった。
前みたいに熱を出してるわけじゃない。避けられてるんだって、すぐわかった。
胸がズキズキと痛んで、苦しくなる。
結局授業に集中することなんてできなくて、私は一日中ぐるぐると考え込んでしまったのだった。
「お前の臨時バディが決まったよ。早速現場に出動してくれ」
無気力のままぼうっと陰陽寮に戻った私は、犬飼さんからそう告げられた。
「……誰になったの。私の知ってる人?」
聞きたいような、聞きたくないような。
そんな心地で聞くと、犬飼さんは曖昧な表情を浮かべる。
「知ってるやつだよ。行けば分かるさ」
濁された言葉に、淡い願いが浮かんでしまう。
そんなはず、ないのに。
『3キロ先、児童公園にて妖魔化した《もっけ》を確認!』
現場に着くと──既に敷地内に小さな結界が張られていることに気づく。
中には巨大な梟のあやかし、もっけが囚われていた。
その時背後から、和服を擦るような音が耳に入る。
不安と緊張と、わずかな期待。
湧き上がるそれらを抑え込みながら、私はゆっくりと振り返った。
「……周、くん」
歩いてきたのは、ミルクティー色の髪の男の子だった。
「……分かんない」
珍しく気遣わしげな犬飼さんに対し、私はそう絞り出すのが精一杯だった。
カマイタチの件は、無茶した私が悪い。だけど……。
猫又のニャーコ、橋姫、雪女のおフユ、妖狐のコンヤ。今まで浄化したあやかしたちの顔が浮かんでくる。
どうしても、どうしても浄化を諦められなかった。
黙ってしまった私の胸中を察したんだろう。犬飼さんは、励ますように肩を叩いてくれる。
「そうだよなぁ。だが、浄化を捨てる決断ができない以上、ソロ活動はさせられない。当面は別の陰陽師と臨時バディを組んでもらうことになるが、いいな?」
――緋暮とじゃないと嫌だ。
なんて、言えるはずもない。だってこれは、私が蒔いた種だから。
「……うん」
他にどうしようもなくて、本音を押し殺して頷いたのだった。
*
翌日。
あんな別れ方をしたけど、学校じゃ席は隣だ。
どんな顔して会えばいいのかな、なんて考えながら登校したけど……緋暮は休みだった。
前みたいに熱を出してるわけじゃない。避けられてるんだって、すぐわかった。
胸がズキズキと痛んで、苦しくなる。
結局授業に集中することなんてできなくて、私は一日中ぐるぐると考え込んでしまったのだった。
「お前の臨時バディが決まったよ。早速現場に出動してくれ」
無気力のままぼうっと陰陽寮に戻った私は、犬飼さんからそう告げられた。
「……誰になったの。私の知ってる人?」
聞きたいような、聞きたくないような。
そんな心地で聞くと、犬飼さんは曖昧な表情を浮かべる。
「知ってるやつだよ。行けば分かるさ」
濁された言葉に、淡い願いが浮かんでしまう。
そんなはず、ないのに。
『3キロ先、児童公園にて妖魔化した《もっけ》を確認!』
現場に着くと──既に敷地内に小さな結界が張られていることに気づく。
中には巨大な梟のあやかし、もっけが囚われていた。
その時背後から、和服を擦るような音が耳に入る。
不安と緊張と、わずかな期待。
湧き上がるそれらを抑え込みながら、私はゆっくりと振り返った。
「……周、くん」
歩いてきたのは、ミルクティー色の髪の男の子だった。
