カマイタチだった妖力が、塵となって消えていく。
緋暮が、カマイタチを祓った。
祓ってしまったんだ。
「どうして……」
私は今の攻撃、避けられたのに。
多少怪我してでも、浄化したかったのに!
「どうして祓っちゃったの!」
「……」
月の光を背にした彼が、まるで知らない人みたいに見えた。
頭の中でさっきのあやかし講習の、橋姫と緋暮の会話が蘇る。
『あとそこの男、緋暮とやらもね!』
『……え、僕?』
『他に誰がいるのよ』
あの気難しい橋姫が、過去自分に刀まで突きつけた緋暮にまで、身を案じる声をかけたのだ。
緋暮だってさっき、戸惑いながらも元妖魔のあやかしたちに「いってきます」って言ってたのに!
妖魔化したカマイタチを浄化して、またあやかし講習を開く。
新しい仲間が増えたね、元に戻れてよかったねって、楽しく皆と笑い合う。
ほんの数分前まで、私はそんな夢を見ていた。
『ほら。人間とあやかしだって、仲良くなれるでしょ?』
『……そうかもしれへんね。たまには、やけどな』
なんて。そんな夢を、見ていた。
なのにどうして、そんな簡単に祓えてしまったの?
浄化した皆を見ても、緋暮の心には響かなかったの?
「……私、まだ戦えた! あとちょっとでカマイタチだって、浄化できたはず!」
「ほんまに言うてる?」
平坦な声に、背筋が凍る。漆黒の瞳は鋭利な刀の切先みたいな、冷酷な光を放っていた。
「僕が祓わんかったら椿ちゃん、斬られてたで」
「……っ! でも怪我したって私、浄化したかった! 陰陽寮に戻れば、周くんが治療してくれるし!」
「治癒師やって万能やない。死んだら治せへん」
――死?
緋暮が、カマイタチを祓った。
祓ってしまったんだ。
「どうして……」
私は今の攻撃、避けられたのに。
多少怪我してでも、浄化したかったのに!
「どうして祓っちゃったの!」
「……」
月の光を背にした彼が、まるで知らない人みたいに見えた。
頭の中でさっきのあやかし講習の、橋姫と緋暮の会話が蘇る。
『あとそこの男、緋暮とやらもね!』
『……え、僕?』
『他に誰がいるのよ』
あの気難しい橋姫が、過去自分に刀まで突きつけた緋暮にまで、身を案じる声をかけたのだ。
緋暮だってさっき、戸惑いながらも元妖魔のあやかしたちに「いってきます」って言ってたのに!
妖魔化したカマイタチを浄化して、またあやかし講習を開く。
新しい仲間が増えたね、元に戻れてよかったねって、楽しく皆と笑い合う。
ほんの数分前まで、私はそんな夢を見ていた。
『ほら。人間とあやかしだって、仲良くなれるでしょ?』
『……そうかもしれへんね。たまには、やけどな』
なんて。そんな夢を、見ていた。
なのにどうして、そんな簡単に祓えてしまったの?
浄化した皆を見ても、緋暮の心には響かなかったの?
「……私、まだ戦えた! あとちょっとでカマイタチだって、浄化できたはず!」
「ほんまに言うてる?」
平坦な声に、背筋が凍る。漆黒の瞳は鋭利な刀の切先みたいな、冷酷な光を放っていた。
「僕が祓わんかったら椿ちゃん、斬られてたで」
「……っ! でも怪我したって私、浄化したかった! 陰陽寮に戻れば、周くんが治療してくれるし!」
「治癒師やって万能やない。死んだら治せへん」
――死?
