あやしき恋と陰陽師!

「グォアアア……!」

 咆哮が聞こえ、つむじ風が肌を撫でる。慌てて飛び退くと、すぐ隣にあった木がスパンと切れた。

「わっ!」
「相当凶暴化しとる、厄介やな」

 妖魔化したカマイタチは、ドス黒く濁ったオーラを纏っていた。

 ――ゴオオッ!

 倒れてくる木々や、襲いかかる見えない風の刃を避けながら走る。
 カマイタチはすばしっこくて、妖力で底上げされた動体視力を持ってしても、追うのは一苦労だった。

「不味いで、あの先は住宅街や」
「そんな!」

 ――まずは追いつかなきゃ!
 私は風の刃を気にしすぎるのをやめ、その分スピードを上げた。
 
 頬や腕を風の刃が掠めていく。
 だけど、怪我なら周くんが治してくれる!

 何とか接近し、一撃入れようと錫妖杖を振りかぶった時……カマイタチと視線がかち合った。

 ――シュッ!
 至近距離から飛んできた風の刃を、半身だけ捻って避ける。

「当たらない、よっと!」
 
 そのまま杖を振り下ろそうとした瞬間――足元がガクッと、風によって掬われてしまう。

「え!?」

 途端にバランスが崩れ、身体が地面へと近づいていく。
 
 ――風の刃は囮!? 
 第二陣の風で、体勢を崩すのが本当の狙いだったんだ!

 カマイタチはその好機を逃さない。
 大きな鎌が、私目掛けて――。
 


 ――グサリ。


 私が後ろに飛んで逃げるより速く、カマイタチの胴体は背後から刀で貫かれていた。
 
「【急急如律令】」
 
 冷たく響いたのは、緋暮の声だった。