「出でよ、式盤」
周くんは妖力を練り、円状の式盤を呼び出した。
「【我は暦を詠みし者、古き術継ぐ観測者。太極は両儀、両儀は四象、四象は八卦を生ずかな。八卦吉凶を定むれば、あやし歪みを今示せ――】」
詠唱とともに光の粒が集まり、周くんを包み込む。
――綺麗……!
それは、思わず見惚れてしまうほど優美な暦詠みだった。
「――出現したのはカマイタチ。陰陽寮から南南西の方角の森。距離にして9キロ463メートル先です」
「メートル単位で暦を?」
緋暮が一瞬、目を細めた。
周くんの暦詠みの精密さに驚いているみたい。
東部の詠暦院の中でも一番の予測精度を誇る周くん。
天才と言われている彼だけど、暦詠みの技術は幼少期からの鍛錬によるもの、らしい。
「ふふん、ウチの周くんは凄いでしょ!」なんて、私まで得意な気持ちになる。
「じゃあ、私と緋暮で行ってくるよ」
周くんは頷くと、緋暮に視線を送った。
「くれぐれも、椿さんを怪我させることのないよう」
「はっ、僕を誰や思てんの?」
緋暮はいつも通りの不遜な笑みを浮かべた。
その顔を見て、安心した自分に気づく。柄にもなく、想定外の事態に緊張していたみたい。
冷静な男子二人は、私より陰陽師歴が長い。負けてられないなと思った。
講義室から出る直前、後ろから声がかかる。
「椿っ! その……気をつけてっ。ほら貴女、すぐ無理するんだから」
「橋姫っ!」
少し頬を染めながら、橋姫がそっぽを向く。その横で微笑む、猫又のニャーコと雪女のおフユ。
「あとそこの男、緋暮とやらもね!」
「……僕?」
「他に誰がいるのよっ」
さらに橋姫に名指しされ、緋暮の口からは困惑の声が漏れていた。
私もちょっとビックリして、嬉しくなる。
――緋暮もちゃんと、あやかしと仲良くなってるんだ!
「いってきます!」
「「行ってらっしゃい!」」
いくつもの声が重なる。そして私は先にドアに手をかけていた緋暮の裾を引っ張った。
「緋暮もほら!」
「……いってきます」
小さな声だったけど、確かに彼はそう言った。
周くんは妖力を練り、円状の式盤を呼び出した。
「【我は暦を詠みし者、古き術継ぐ観測者。太極は両儀、両儀は四象、四象は八卦を生ずかな。八卦吉凶を定むれば、あやし歪みを今示せ――】」
詠唱とともに光の粒が集まり、周くんを包み込む。
――綺麗……!
それは、思わず見惚れてしまうほど優美な暦詠みだった。
「――出現したのはカマイタチ。陰陽寮から南南西の方角の森。距離にして9キロ463メートル先です」
「メートル単位で暦を?」
緋暮が一瞬、目を細めた。
周くんの暦詠みの精密さに驚いているみたい。
東部の詠暦院の中でも一番の予測精度を誇る周くん。
天才と言われている彼だけど、暦詠みの技術は幼少期からの鍛錬によるもの、らしい。
「ふふん、ウチの周くんは凄いでしょ!」なんて、私まで得意な気持ちになる。
「じゃあ、私と緋暮で行ってくるよ」
周くんは頷くと、緋暮に視線を送った。
「くれぐれも、椿さんを怪我させることのないよう」
「はっ、僕を誰や思てんの?」
緋暮はいつも通りの不遜な笑みを浮かべた。
その顔を見て、安心した自分に気づく。柄にもなく、想定外の事態に緊張していたみたい。
冷静な男子二人は、私より陰陽師歴が長い。負けてられないなと思った。
講義室から出る直前、後ろから声がかかる。
「椿っ! その……気をつけてっ。ほら貴女、すぐ無理するんだから」
「橋姫っ!」
少し頬を染めながら、橋姫がそっぽを向く。その横で微笑む、猫又のニャーコと雪女のおフユ。
「あとそこの男、緋暮とやらもね!」
「……僕?」
「他に誰がいるのよっ」
さらに橋姫に名指しされ、緋暮の口からは困惑の声が漏れていた。
私もちょっとビックリして、嬉しくなる。
――緋暮もちゃんと、あやかしと仲良くなってるんだ!
「いってきます!」
「「行ってらっしゃい!」」
いくつもの声が重なる。そして私は先にドアに手をかけていた緋暮の裾を引っ張った。
「緋暮もほら!」
「……いってきます」
小さな声だったけど、確かに彼はそう言った。
