あやしき恋と陰陽師!

 緋暮を見舞いに行ってから、ちょうど一週間が経った日のこと。
 東部陰陽寮の一室に、男子二人の嫌そうな声が響く。

「どうして芦ヶ谷さんがここに?」
「こっちの台詞やけどね、保科くん?」

 想定よりも不穏な雰囲気に、背筋を冷や汗が伝う。

「ふ……二人ともあやかしに詳しいから『あやかし講習』に呼ぼうって、犬飼さんが」

 小さな声で答えると、周くんの真顔は圧を増し、緋暮は露骨にため息をついた。
 
「あの人も粋なことしはるわ(余計なことすんなや)」
「ぼく一人で講師役は充分なのに」
「まぁまぁまぁ!」

 睨み合う男子二人に挟まれ、私は心の中で叫ぶ。

 ――犬飼さんっ、ヘルプ!
 しかし念は通じない。この相性悪そうな二人を誘うよう私に言ってきたのも、わざとじゃないかと思えてきた。
 
「そもそも『あやかし講習』って何なん? 僕、それすら教えてもらってないんやけど?」
「説明するから!」

 そう。
 今日二人を招集したのは他でもない、『あやかし講習』のためだった。
 
 この部屋にいる陰陽師は周くん、緋暮、私の三人。
 プラス、お行儀よく椅子に座るあやかし四体。

「あやかし講習ってのはね、浄化で妖魔から戻った子たち向けの講習なの!」

 ざっくりと説明すると、周くんがぼそりと補足してくれた。

「この講習については東部でも上層部しか知りません。……西部のスパイに見せるのは危険だって、ぼくは言ったのに」
「ご丁寧な説明、おおきにー」

 あやかしたちと目が合う。彼らも目の前の陰陽師がバチバチしているのに、困惑している様子だった。
 とりあえず「ごめんね!」と心の中で謝っておく。

「メインの講師は周くんだし、初参加の緋暮は見てるだけでも大丈夫だから!」
「何? 僕じゃ講師は務まらんって?」

 彼は指をトントンとさせ、苛立ちを露わにした。どうやら彼のプライドを刺激してしまったらしい。