あやしき恋と陰陽師!

 ――ドタッ!
 慌ててベッドから降りるような音がして、ドアが開いた。
 
 現れたのは、いつもより髪がぺしょっと垂れて顔が赤い緋暮。思っていたよりもしんどそう。

「何で椿ちゃんがここに……あぁ、女子寮と間違えたん?」
「違うから! 犬飼さんに頼まれたの」

 ずいっとお盆を見せつけ、そのままグイグイと強引に緋暮の部屋に押し入った。
 何か言いたげな緋暮に再び寝るようにと促す。
 
「はい、ベッドに戻った戻った!」
「いや、何で一人で男子寮になんか……」

 布団を口元まで引き上げた緋暮は、ブツブツ文句を言ってるみたいだった。

「ほら、お粥作ってもらったから食べなよ」
「……あんなぁ、仮にも男の部屋やで? 何普通に入ってきとんの」

 熱のせいで普段より少し赤い緋暮に、ギロリと睨まれる。

「そっちこそ、もっと人を頼りなよ。体調悪いなら周くんに治して貰えばいいのに」

 言い返すと、緋暮は目に見えて不機嫌になってしまった。
 
「……ふん。治癒師が治せるんは、妖魔関連の病気だけや。ただの風邪には使われへんよ」
 
 かすれた声に、ハッとする。
 風邪の原因は多分、橋姫戦で水を被ってびしょ濡れになったからだ。
 
 私が橋姫を止めてって頼まなければ、水なんていくらでも避けられたはず。

 ってことは、緋暮が熱を出したのは私のせい?
 
「ご、ごめん。すぐ帰るから」
「……ちゃう!」

 立ちあがろうとしたとき、緋暮に袖を掴まれた。彼は珍しく視線を彷徨わせている。

「そうやない、男の部屋に平気でノコノコ上がり込んできといて他の男の名前を……」
「緋暮?」
「なんでもあらへん」

 彼はムスッと頬を膨らませる。まるで、拗ねてるみたいな。

「ハァ〜〜」

 大きくため息をついた緋暮は顔を上げる。

「そや、僕が熱なんか出してしもたんも、ぜーんぶ椿ちゃんのせい。あ〜ほんま、熱くて熱くてかなわんわぁ……やから、」

 腕を引かれ、ベッドの上の緋暮に乗り上げるような体勢になってしまう。

 顔が、近い。

「――責任とって、椿ちゃんが看病して?」

 彼の瞳は、じりじりと焼けつくような熱で潤んでいた。