あやしき恋と陰陽師!

 緋暮の協力を取り付けた次の日。なぜか彼は学校を休んだ。
 犬飼さんに聞くと、彼は驚いた顔になる。

「聞いてないのか? 緋暮が熱出したって」
「えっ!」
 
 てっきり陰陽師の個人仕事か何かだと思ってた。
 
 連絡先を持ってなくても式神で伝えるとか、やり方はある。でも、緋暮は伝えてくれなかった。
 ――バディなのに。

 しゅんとした私を見て、犬飼さんは手をポンと打つ。
 
「そうだ椿、アイツにメシ持ってってやってくれねぇか?」
「何で私が……他の人に頼めば良いじゃん。緋暮、私に何も言わなかったし」

 俯いた私の頭上から、いつもより真剣な犬飼さんの声が聞こえた。
 
「緋暮はさ、西部で有名な芦ヶ谷家の跡取りだ。東部の連中も警戒してる奴は多いっつーか……複雑な立場ってワケ」

 その言葉を聞いて、周くんと初めて会った日の緋暮の言葉を思い出す。
 
『少なくとも父上――芦ヶ谷の当主は、僕をスパイとして送り込んだつもりやろうし』

 ……そっか。緋暮にとって東部陰陽寮は敵地も敵地。
 おまけにプライドの高いアイツのことだから、誰にも頼れないのかもしれない。
 
「でも、男子宿舎に女子は入っちゃダメって決まりあるじゃん」
「特例、特例! アイツの部屋は五〇一号室。粥でも届けてやってくれ」

 そう言い残して、犬飼さんはさっさとどこかへ行ってしまった。

 仕方ない、かぁ。
 私はお粥とスポドリを持って、恐る恐る男子宿舎へ忍び込む。
 ラッキーなことに、誰とも鉢合わせることはなかった。

 五〇一号室の前で立ち止まり、ノックしてみる。

 ――コンコン。
 返事はない。

 ――コンコンコン。

 扉に耳をくっつけ、中の様子を探る。奥の方でもぞり、と動く気配がした。
 これ、起きてるな。

「緋暮、起きてるんでしょ? 開けてよ」
「……は?」