「――そして猫又を浄化した私は、陰陽師になった。全ては、あやかしと仲良くするために!」
私が陰陽師になった経緯を話し終えると、緋暮は重々しく口を開いた。
「……陰陽師とあやかしは、祓う者と祓われるモノ。仲良うしましょなんて、無理に決まっとる」
「違う!」
思わず大声をあげてしまった。脳裏に白髪金眼の、あやかしの少年が浮かぶ。
「きっと手を取り合える。あやかしの男の子が私を助けてくれたように、今度は私があやかしを助けたいの!」
「あやかしの男の子、ね」
ぽつりと呟いた彼は、薄く笑った。
いつもの馬鹿にした笑みとはちょっと違う、「どうしたらいいか分からない」みたいな。
「浄化がたとえ、不確実でも?」
「そう。私は祓うんじゃなくて、清める陰陽師になりたい」
彼は何も言わない。どんなに難しいことを言ってるかは、私もちゃんと理解してる。
「お願い、手伝ってほしいの。緋暮の術があれば、もっと妖魔たちを浄化できるはず!」
「……あほらし」
彼が口にしたのは、そんな言葉だった。
――届かない。
思わず俯く。地面を映す視界が、ゆらゆらと滲んだ。
だけど涙だけは溢すもんかって、目頭にぎゅっと力を入れて堪える。
「そない甘いやり方続けとったらいつか、妖魔に殺されるで」
「……」
「――僕がいなかったら、の話やけど」
「えっ!」
バッと顔を上げると、そっぽを向いた緋暮が目に入った。
「今、なんて」
「言っとくけど、賛同したわけやないから。あくまで、放っておいて死なれたら目覚め悪いってだけや」
「それ、手伝ってくれるってこと?」
思わず緋暮の両手をがっちりと握ってしまう。
私よりちょっと骨ばってる、男の子の手。
「ありがとうっ! や、や、や……やったーっ!」
ガッツポーズを天に掲げていた私の耳には、緋暮の呟きは届かなかった。
「――まさか椿ちゃんが、あの時の子やったなんて」
