あやしき恋と陰陽師!

 瞼を開くと怪物は消えていて、目の前には少年が立っていた。
 
「無事やった?」
 
 そう問いかけてくる彼もまた、普通じゃなかった。
 
 白い髪に金の瞳。
 人間には持ち得ないその色が、夜闇にハッキリ浮かび上がる。

「あ、ありがとう」

 混乱したままお礼を搾り出すと、少年は険しい顔になる。
 
「よりによって月食の日に。今すぐ帰りや」
「でも、迷子になっちゃって」

 すると彼は懐から人型の紙を取り出し、何か小さく唱えた。
 
「式神――この人形に付いていくんや。ええね?」

 顔を上げた時にはもう、彼は消えていた。
 フワリと浮いた式神についていくとすぐ、私は森の出口に辿り着いた。

「椿っ!」
「ママ、パパ、おじいちゃん!」

 両親に抱きしめられながら、涙でぐちゃぐちゃの顔を埋める。
 家に戻ってさっきの出来事を口にすると、おじいちゃんが突然顔色を変えた。
 
「まさか、あやかしを視たのか!?」
「えっ?」

 おじいちゃんは語り出す。遥か昔、うちの先祖は陰陽師だったんだと。
 私も陰陽師の力に目覚めたんじゃないかって言われたけど、助けてもらっただし、そんなはずないって思ってた。
 
 だけど……それから東京へ戻ってすぐのこと。

『グゥァ……ッ』

 またどこかから、恐ろしい声が聞こえたのだ。