あやしき恋と陰陽師!

 それは二年前の夏休み、遠方のおじいちゃん家に帰省したときのこと。

 ちょうどその日は皆既月食で、家族で月を見ることになったんだけど……そんなのすぐ飽きるに決まってる。
 つまんないなーなんて思いながら私は、カブトムシを探しに一人森へ入ったのだった。

 帰省するたび、毎日遊んでた森。夜だろうと迷うはずないのに、その日私は迷子になってしまった。

 ――おかしい。
 木々を照らすのは、薄気味悪い赤い月。
 夜とはいえ真夏だというのに、ゾクリと背筋が寒くなった。

『ア……ガァ、ガゥ』

 そしてどこからか、悍ましい声が聞こえてくる。

『グァア!』

 闇に浮かび上がったのは、二つの黄色い光。
 それはどう見てもこの世のものでは無い、ナニかの瞳だった。

 思わず背を向けて逃げ出す。

「はっ、はっ……!」

 だけど、必死に走った先は――崖だった。
 目の前のソレは唾液をぼとぼとと地面に垂らしながら、舌舐めずりをする。

「た、助けて、誰か!」

 ギョロリとした目のソレを前に、私は震えることしかできなかった。
 その時、一陣の風が頬を撫でる。
 
「【急急如律令】」