あやしき恋と陰陽師!

「ったく! 椿ちゃんの破茶滅茶な作戦に付き合えるんは僕くらいやからな!」

 川から濁流が襲い来るのも構わず、緋暮は波打つ吊り橋の上で大きく跳ぶ。
 彼は水を思いっきり被りながら、そのまま正面から橋姫に斬りかかった。

「【天網恢恢、疎にして漏らさず。刻む刹那は永久に】」
 
 妖魔の刻を止める、緋暮の呪文。

 ぽたり、ぽたり。
 彼の袖と髪から、雫が音を立てて落ちる。
 
 私は橋姫に向かって駆け出し、浄護符を錫妖杖で突いた。
 
「【我は汝を還す者、揺蕩い巡る現世の花。罪を流すは慈悲の雨。赦しの灯火、いま宿せ――】!」

 ――ぶわぁっ!
 荒れ狂う川が、蠢く吊り橋が、光の粒に包まれて戻っていく。
 ぽつんと残されたのは、橋の手すりに倒れ込んだあやかし――橋姫だ。

「橋姫、こんにちは。私は陰陽師の朝霞椿。貴女を浄化しました」
「……浄化?」

 橋姫から、鬱屈とした視線が向けられる。
 もう妖魔化は解けているはずなのに、彼女の瞳の奥は怨みで濁っていた。

「……余計なことを」

 吐き捨てられ、さあっと全身から血の気が引く。
 ――余計な、こと?