あやしき恋と陰陽師!

 陰陽寮に戻ると、一人の男の子が駆け寄ってきた。

 「お疲れ様です」

 彼の白い制服は詠暦院(えいれきいん)……妖魔の種類や出現場所を占う部署に所属している証だった。
 それに対して妖魔との戦いを専門とするのが、私や緋暮の所属する部署、調妖院(ちょうよういん)だったりする。
 
「周くん!」

 彼の名前は保科周(ほしなしゅう)くん。
 ミルクティー色の髪に綺麗な顔をした、一個下の中学一年生。
 幼い頃からその才能を見込まれて育てられた、超エリート陰陽師なのだ。
 
「椿さん、今回の任務も大丈夫でしたか?」
「余裕余裕!」

 心配そうな彼にガッツポーズを見せると、横でボソッと「余裕て」と聞こえた。
 じろりと睨みつけるけど、緋暮はニコニコした表情を浮かべたままだ。
 この猫被りめ!

「でもここ、怪我してます」
「え?」

 周くんの手が頬に伸ばされる。
 心配そうな瞳に見つめられて、距離の近さにちょっと照れてしまった。
 
「このくらい全然平気だよ?」
「駄目です……治しますよ」

 首を横に振った周くんは、指で印を結ぶ。
 彼の手の甲に紋様が浮かび、光った。

「【(りょう)(ひゃく)()(じゅん)(ない)()(しょ)(すい)(かん)――左に廻せ、其の円環――妖脈遡及(ようみゃくそきゅう)】」