あやしき恋と陰陽師!

 しかし緋暮はくるりと背を向け、刀を構える。

「別に要らんし」
「ちょ、ちょっと!」
 
 刀に手を掛けて走りだそうとする緋暮の制服を、私は慌てて引っ張った。

「もう、冗談だって。はいっ」

 ぺたっと彼の背に貼り付けると、震えはすぐ治ったようだった。

「今の刀の構え方、変だったし……ね、寒いの苦手なんでしょ? 意地張らないでよ」

 嫌味にキレがなかっただけじゃない。
 前見た時とは刀の握り方が違った。寒さで上手く握れなかったんだろう。
 
 私だって何も、本気で意地悪しようとした訳じゃない。

「……おーきに」

 緋暮は小さくそう言った。
 不服そうな表情だったけど……なんだ。
 ちゃんとお礼、言えるんじゃん。

「行くで」
「ん!」

 私と緋暮は同時に走り出す。左右ともに2.0の視力が、敵を捉えた。

「見つけたっ」

 雪女もこちらに気がついたようだ。大雪に紛れて向かって来る雪だるまの軍勢に、緋暮が斬りかかった。
 雪でできた体がすっぱり切られ、次々と消滅していく。だけど――。

「コイツらなんぼ斬っても意味あらへん、先に雪女を祓わな!」

 私も攻撃を躱しながら、雪女に接近する。

浄護符(じょうごふ)……きゃっ!?」

 すると、避けたはずの雪が突然氷に変わり、武器ごと固められてしまう。
 慌てて前を見ると、雪女の放った氷のつぶてが眼前に迫ってきていた。

 ――当たる……!
 頬に痛みが掠った瞬間、後ろに襟が引かれる。

 助けてくれた彼は焦ったような、怒ったような顔をしていた。

「なにしてんねん、さっさと祓いや!」
「祓わない! ――浄化するの!」