あやしき恋と陰陽師!

「へばりよったら置いてくで」
「そっちこそ着いてきてよね!」

 こっちだって、運動神経と体力には自信がある。
 伊達に東部陰陽寮でエースと呼ばれていたわけではないのだ。

「「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前!」」

 二人同時に九字を切る。
 九字は、陰陽師の身を守ってくれる呪文なんだ。

「出でよ、錫妖杖(しゃくようじょう)!」
「出でよ、斬刻刀(ざんこくとう)

 妖力を練って武器を召喚する。
 私の武器はジャラジャラ輪っかと勾玉のついた、錫妖杖。
 緋暮の武器は初対面の時に一反木綿を切っていたあの刀。
 
 式神について行った先は、砂浜公園だった。
 近づくにつれ、雪が吹雪に変わって行く。

「いや、さっっむ!」
「はっ、この程度。鍛錬足りてへんのやない?」

 そう言う緋暮は……思いっきりぶるぶる震えていた。
 長いまつ毛が凍っている様は、見ていて面白いくらい。

「ふーん?」
 
 だけど、煽ってくる緋暮に怒鳴り返さなかったのには理由がある。
 チッチッチと舌を鳴らして、懐から一枚の護符を取り出した。

「嫌味なんて言って良いのかな〜? これ、欲しくないの?」
「……何やの、その紙切れ」