あやしき恋と陰陽師!

 昼休み。私はまた緋暮の首根っこを掴んで、廊下の端まで連れていく。

「女避けおおきに〜。女どもがもう鬱陶しゅうて鬱陶しゅうて」
「私を巻き込まないでってば!」

 待ってコイツ、今女子のこと「女ども」って言った??

 彼は悪戯っぽく、ぺろりと舌を出す。
 私のものより、少しだけ細長くて薄い舌。

「え……」

 思わず彼の舌に目を奪われる。その形は、まるで――。

 「椿ちゃん」

 突然名前を呼ばれ、我に返る。
 遅れて両腕に冷気を感じた。

「ちょ、何これ!? 雪?!」
 
 窓の外を見ると……今は五月末だというのに、はらはらと雪が降り始めていた。
 季節外れの雪、すなわち――。

「これってまさか」
「第13条違反や」
「え?」

 一体何のことを言ってるか分からず振り返ると、彼は淡々と読み上げ始める。
 
「あやかし法第13条。世の(ことわり)を歪めるべからず」
「うげぇ」

 あやかし法ってのは、陰陽師とあやかしの中での法律。
 これに違反した者を、陰陽師は取り締まることになっているんだけど……。

 ――コイツまさか、あやかし法全部暗記してるの?!
 
 だけど口に出したら「まさか椿ちゃん、覚えてないん?」とか言われそうだし、黙っとうかな。

「たった50条やろ。まさか椿ちゃん、覚えてないん?」

 ……だから黙ったのに! 
 50条って、どう考えても”たった”じゃないでしょうが!

 ぐぬぬと唇を噛んでいると、窓から人型の紙――任務を告げる式神が勢いよく入ってきた。

『雪女が出現! 現場は北西に5キロ先の公園、吹雪に注意されたし!』