あやしき恋と陰陽師!

 陰陽師。
 それは、悪に堕ちたあやかし──妖魔(ようま)を倒す職業。
 飛鳥時代に日本に渡った陰陽道は、令和になった現在でもひっそりと継承されていた。
 そして私、朝霞椿(あさかつばき)もまた、現代で活動する陰陽師の一人なんだ!

(りん)(ぴょう)(とう)(しゃ)(かい)(じん)(れつ)(ざい)(ぜん)!──出でよ、錫妖杖(しゃくようじょう)!」

 ”九字”と呼ばれる呪文を切り、鈴や輪がジャラジャラついた金色の杖──錫妖杖という武器を召喚する。

 そして私は夜の校庭で、対面した妖魔を見て大声で文句を叫んだ。

一反木綿(いったんもめん)、長すぎ〜ッッ!」

 禍々しいオーラを放つ白い布は、一反木綿という名で知られるあやかしだ。
 だけどそのオーラは酷く澱んでいて……陰陽師の中で『妖魔化』と呼ばれる状態になっていた。

 一反木綿は白い布で、校庭の木々を次々と薙ぎ倒していく。
 丹精込めて水遣りをしている用務員さんが見たら、泡を吹いて倒れちゃうかもしれない。

「ほら、大人しくしなさ……うう、凶暴なんだから!」
 
 襲いかかってくる一反木綿を身を捻って躱し、白い布を捌いていく。
 まずはこの動きを止めなきゃ、”浄化”の間が作れない!

「ぎゃっ!」

 躱したと思った布の下から、反対の端だと思われる布が現れる。
 足に絡みついたその白い布によって、私は宙ぶらりんのぐるぐる巻きにされてしまった!
 ――これ、一反木綿ってか……ミイラじゃない?
 
「あのさ、詠唱中に攻撃するの反則だから! そもそも『一反』って何mなのよ!?」
「約11mやね」
「え?」

 耳に入ったのは、のんびりとした柔らかい関西弁。
 どうにか首を捻ると、白い大蛇に乗って宙に浮いている少年が一人、頬杖をついてこちらを見ていた。