えっ⋯⋯あんた、泣いてるの?

わ、私は泣いてないわよ!

誰の話なのかって?

実は、知らないのよ。

年配の知り合いから聞いた話だから。


彼女は、彼以外の誰かと結婚することなんて考えられないほど愛してたんでしょうね。

彼も、彼女一筋だったからこそ、そこまで思い詰めたんだろうし⋯⋯。


今の時代では考えられないような話だけど、私も、そんなふうに、一人の人だけを想って生きていきたいな⋯⋯。

え?

私は元彼に囚われてるから無理って?


はぁ⋯⋯ホントのことを言うわ。

失恋した相手のことを元彼って言ったのは、あくまで便宜上よ。

本当は⋯⋯彼には本命が居て、私は単なる横恋慕。

彼にしてみれば、私のことなんて、妹みたいにしか思えないことも知ってたから、実際は恋人でも何でもなかった。


でも、人間なんておかしなものよね。

決して手に入らないものほど輝いて見えるから、いつまで経っても諦めることもできなくて。


そんな時よ。

アンタと知り合ったのは。

年下だし、タイプでもない⋯⋯。

それなのに、どうして、こんな風に一緒に居るんだろうね?

自分でも、よくわかんないわぁ。


風が強くなってきたわね。

え?

聞こえなかった、何?

ん⋯⋯?

だーかーら!聞こえないってば、風が強すぎて。

とりあえず、そこの鐘を鳴らしたら、もう帰ろうか。

何よ⋯⋯嫌なの?

⋯⋯もう!訳わかんない、今度はデレデレしちゃって。

と、とにかく!その鐘を鳴らしたら、早く帰るよ!

帰りが遅くなると、うちの両親、アンタに悪印象を抱くからね!




FIN