いったい、どうしたのだろう。 もしかしてテオドールになにかあったのかしら?
気づくと私は駆け出していた。
私の足音に気づいたらしいアレクはゆっくりと瞼を開けた。
「ど、どうしたの? テオドールは?」
「テオドール……?」
目を開けるやいなや、矢継ぎ早に質問され、アレクは目をぱちくりとさせる。アレクはスッと立ち上がると、後ろ手で服についた土を払った。
「ああ、別にテオドールは関係ない。元気だ」
「そう、それなら良かった」
アレクの返答にホッとして頬がゆるむ。
ふと疑問になり、アレクの顔を見上げる。
「それならどうしてここに……?」
夕日に照らされたせいか顔がほんのりと赤く染まって見えた。
「――っ、一日中、どこへ行ってたんだ」
視線を先に逸らしたのはアレクの方だった。
「今日は街へ出かけていたの。思ったよりも時間がかかってしまったけど」
私は家の鍵を開け、扉を開く。
「中に入って紅茶でもいかが?」
いつからいたのかわからないけれど、アレクは私に話があるようだし。
アレクは一瞬弾かれたように顔を上げた。そしてすぐさま小さくうなずいた。
扉の横にいたアレクの前を通り、先に私が中に入ると、アレクは鼻をスンと鳴らした。
「じゃあ、どうぞ」
そして私は初めて人を家の中へと招き入れた。
部屋の中央に置いてあるソファに座ったアレクに紅茶を出した。あとは街で買ってきた焼き菓子をお皿に並べ、目の前のテーブルに置く。
アレクはカップを手にして、紅茶を飲んだ。
一瞬、表情がやわらかくなったので、気に入ったみたいだ。
「それで、どうして家の前にいたのかしら?」
しかも、こんな時間まで。いつからいたの?
「姉上が前から手配していた美容効果のある化粧品が手に入ったらしく、君にも渡すと言ってきた。だから午前に一度、迎えの馬車を寄こしたんだ。だが、戻ってきた従者は君が留守だったと告げた」
朝食を食べてすぐに街に出かけたから、出発したあとだったのだろう。
「昼にもう一度、姉が迎えを寄こしたんだが、またもや馬車は無人で帰ってきた」
その頃はちょうど診察を終えた頃かしら?
「従者の報告を受けて、おかしいと思ったんだ」
アレクは眉間に皺を寄せている。
「どうして?」
私は首を傾げた。
「こんなに長時間家を空けたことが、今までなかっただろう? 療養施設に行ったのかと思ったら、来ていないと言うし」
「まさか、療養施設にまで行ったの?」
驚いて自分でも思ったよりも大きな声を出すと、アレクはわずかに口を尖らせた。
「いつまでたっても帰ってこないし。いったい、どこへ行ってしまったのかと思って。心配したんだ」
アレクは拗ねた子供のようだ。
「あら、それは心配かけてしまったわね」
私はコロコロと声を出して笑う。
「今日は街へ行ってきたの」
「それなら言ってくれれば一緒に行った。馬車を出すこともできたはずだ」
アレクと一緒では意味がないのだ。私は診療所へ行ったのだから。
返答に困った私はあいまいに笑ってごまかす。
「それで街へはなにをしに?」
「ちょっと、用事があったの」
まいった、今日に限ってグイグイくるな。
「街から帰ってきた君から、消毒の匂いがした」
「えっ」
自分では気づかなかったので、驚いた。
「そ、そうかしら。鼻がきくのね」
嫌だわ、私ってば恥ずかしい。腕を鼻につけてクンクンと匂いを確認するが自分ではわからない。
アレクは紅茶のカップをテーブルに置くと、私の前に立つ。
「ど、どうしたの?」
顔は真剣そのもので、笑いを浮かべてごまかそうとした。
「どこか悪いのか?」
アレクはジッと私の目を見つめる。
気づくと私は駆け出していた。
私の足音に気づいたらしいアレクはゆっくりと瞼を開けた。
「ど、どうしたの? テオドールは?」
「テオドール……?」
目を開けるやいなや、矢継ぎ早に質問され、アレクは目をぱちくりとさせる。アレクはスッと立ち上がると、後ろ手で服についた土を払った。
「ああ、別にテオドールは関係ない。元気だ」
「そう、それなら良かった」
アレクの返答にホッとして頬がゆるむ。
ふと疑問になり、アレクの顔を見上げる。
「それならどうしてここに……?」
夕日に照らされたせいか顔がほんのりと赤く染まって見えた。
「――っ、一日中、どこへ行ってたんだ」
視線を先に逸らしたのはアレクの方だった。
「今日は街へ出かけていたの。思ったよりも時間がかかってしまったけど」
私は家の鍵を開け、扉を開く。
「中に入って紅茶でもいかが?」
いつからいたのかわからないけれど、アレクは私に話があるようだし。
アレクは一瞬弾かれたように顔を上げた。そしてすぐさま小さくうなずいた。
扉の横にいたアレクの前を通り、先に私が中に入ると、アレクは鼻をスンと鳴らした。
「じゃあ、どうぞ」
そして私は初めて人を家の中へと招き入れた。
部屋の中央に置いてあるソファに座ったアレクに紅茶を出した。あとは街で買ってきた焼き菓子をお皿に並べ、目の前のテーブルに置く。
アレクはカップを手にして、紅茶を飲んだ。
一瞬、表情がやわらかくなったので、気に入ったみたいだ。
「それで、どうして家の前にいたのかしら?」
しかも、こんな時間まで。いつからいたの?
「姉上が前から手配していた美容効果のある化粧品が手に入ったらしく、君にも渡すと言ってきた。だから午前に一度、迎えの馬車を寄こしたんだ。だが、戻ってきた従者は君が留守だったと告げた」
朝食を食べてすぐに街に出かけたから、出発したあとだったのだろう。
「昼にもう一度、姉が迎えを寄こしたんだが、またもや馬車は無人で帰ってきた」
その頃はちょうど診察を終えた頃かしら?
「従者の報告を受けて、おかしいと思ったんだ」
アレクは眉間に皺を寄せている。
「どうして?」
私は首を傾げた。
「こんなに長時間家を空けたことが、今までなかっただろう? 療養施設に行ったのかと思ったら、来ていないと言うし」
「まさか、療養施設にまで行ったの?」
驚いて自分でも思ったよりも大きな声を出すと、アレクはわずかに口を尖らせた。
「いつまでたっても帰ってこないし。いったい、どこへ行ってしまったのかと思って。心配したんだ」
アレクは拗ねた子供のようだ。
「あら、それは心配かけてしまったわね」
私はコロコロと声を出して笑う。
「今日は街へ行ってきたの」
「それなら言ってくれれば一緒に行った。馬車を出すこともできたはずだ」
アレクと一緒では意味がないのだ。私は診療所へ行ったのだから。
返答に困った私はあいまいに笑ってごまかす。
「それで街へはなにをしに?」
「ちょっと、用事があったの」
まいった、今日に限ってグイグイくるな。
「街から帰ってきた君から、消毒の匂いがした」
「えっ」
自分では気づかなかったので、驚いた。
「そ、そうかしら。鼻がきくのね」
嫌だわ、私ってば恥ずかしい。腕を鼻につけてクンクンと匂いを確認するが自分ではわからない。
アレクは紅茶のカップをテーブルに置くと、私の前に立つ。
「ど、どうしたの?」
顔は真剣そのもので、笑いを浮かべてごまかそうとした。
「どこか悪いのか?」
アレクはジッと私の目を見つめる。
