「時には深く考え込み、幸薄な自分に涙した。悲劇のヒロインにどっぷり浸かり、枕を濡らした夜もあった!」
声が震え、診察室の空気が張り詰める。
「それも全部、違ったってこと⁉ 感傷に浸ったのは勘違いで、私の涙、全部無駄⁉ まさかの悲劇のヒロインごっこ!」
両手を広げて叫ぶ私に、医師は眉をひそめる。
「ど、どうしてくれるんですか!?」
医師は少し間を置き、静かに問い返す。
「でも、あなたは今、幸せなのでしょう?」
医師に聞かれ一瞬、言葉に詰まる。
「そ、そりゃ、そうですけど……」
すると医師は肩に手をポンと置き、にっこり笑った。
「良かったじゃないですか。死ぬ気になったら道が開けたのでしょう。ここに余命を確認しにきたのは、つまり――生きたいからですよ」
その言葉に不思議と心の奥に小さな光が灯る。
でも……なんだか、うまく丸め込まれているような気が、しないでもない。
「半年前、あなたの心臓の音は確かにおかしかった。まるで中になにかを閉じ込めていて、今にも外に出たがっているような音が、聴診器を通して聞こえてきました。その音はクラッド病しか思いあたらない。それが今ではすっかり平常となった。自分で思いあたることはありませんか?」
医師に言われて考え込む。心臓の痛みは消え去った。同時に余命を宣言されてから止めてしまった母の薬が脳裏に浮かぶ。
まさかねー―。
「とにかく、あなたは健康です! これからの人生楽しみましょう! まだ先は長い!」
「あ、ありがとうございます」
医師のお墨付きをもらい、なんだか腑に落ちないまま診療所をあとにした。
診療所を出て広場のベンチに腰かけた。
私が健康そのもの……?
だが医師の診察にしっくりくる。なぜなら、ここ最近は調子が良いからだ。
余命一年だと思って過ごしたこの半年、なんだったんだ。それこそ、ノクティス家を出る決断をしたのは、間違いなく余命宣告を受けたからだ。
確かにあの言葉がなければ、今でもノクティス家で我慢して過ごしていたと思う。
余命が間違いだったということは、私の残された人生はまだ長いということ。
つまり、これからもこの魔力について学ぶことができる。それは人を助けることができるということ。
最初は戸惑いが大きかったが、じわじわと喜びがわいてくる。
そうよ、母の残してくれた家で薬草を栽培して、癒しのしずく作りに励んで、さらなる改良を進めるとか。
これからも先もずっとそんな生活が続けることができるのなら、最高じゃない?
そう、生きているなら、なんでもできる気がしてきた。
じわじわと実感がわく。
やはり私は生きたかったのだ。まだやり残したことはたくさんある。ノクティス家では無能と呼ばれていた私だけど、絶対に私にもできることがあるはずだわ。
どうせ半年後に散ると思っていたこの命、それならばもう、これからも好きに生きる。
もう私は無能だと蔑まれながら、私をこき使い続けようとする家族のもとには戻らない、絶対に。
声が震え、診察室の空気が張り詰める。
「それも全部、違ったってこと⁉ 感傷に浸ったのは勘違いで、私の涙、全部無駄⁉ まさかの悲劇のヒロインごっこ!」
両手を広げて叫ぶ私に、医師は眉をひそめる。
「ど、どうしてくれるんですか!?」
医師は少し間を置き、静かに問い返す。
「でも、あなたは今、幸せなのでしょう?」
医師に聞かれ一瞬、言葉に詰まる。
「そ、そりゃ、そうですけど……」
すると医師は肩に手をポンと置き、にっこり笑った。
「良かったじゃないですか。死ぬ気になったら道が開けたのでしょう。ここに余命を確認しにきたのは、つまり――生きたいからですよ」
その言葉に不思議と心の奥に小さな光が灯る。
でも……なんだか、うまく丸め込まれているような気が、しないでもない。
「半年前、あなたの心臓の音は確かにおかしかった。まるで中になにかを閉じ込めていて、今にも外に出たがっているような音が、聴診器を通して聞こえてきました。その音はクラッド病しか思いあたらない。それが今ではすっかり平常となった。自分で思いあたることはありませんか?」
医師に言われて考え込む。心臓の痛みは消え去った。同時に余命を宣言されてから止めてしまった母の薬が脳裏に浮かぶ。
まさかねー―。
「とにかく、あなたは健康です! これからの人生楽しみましょう! まだ先は長い!」
「あ、ありがとうございます」
医師のお墨付きをもらい、なんだか腑に落ちないまま診療所をあとにした。
診療所を出て広場のベンチに腰かけた。
私が健康そのもの……?
だが医師の診察にしっくりくる。なぜなら、ここ最近は調子が良いからだ。
余命一年だと思って過ごしたこの半年、なんだったんだ。それこそ、ノクティス家を出る決断をしたのは、間違いなく余命宣告を受けたからだ。
確かにあの言葉がなければ、今でもノクティス家で我慢して過ごしていたと思う。
余命が間違いだったということは、私の残された人生はまだ長いということ。
つまり、これからもこの魔力について学ぶことができる。それは人を助けることができるということ。
最初は戸惑いが大きかったが、じわじわと喜びがわいてくる。
そうよ、母の残してくれた家で薬草を栽培して、癒しのしずく作りに励んで、さらなる改良を進めるとか。
これからも先もずっとそんな生活が続けることができるのなら、最高じゃない?
そう、生きているなら、なんでもできる気がしてきた。
じわじわと実感がわく。
やはり私は生きたかったのだ。まだやり残したことはたくさんある。ノクティス家では無能と呼ばれていた私だけど、絶対に私にもできることがあるはずだわ。
どうせ半年後に散ると思っていたこの命、それならばもう、これからも好きに生きる。
もう私は無能だと蔑まれながら、私をこき使い続けようとする家族のもとには戻らない、絶対に。
