【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~

「姉上、招待状に不備はなかったのか?」

 アレクから質問されたベアトリーチェ様は眉をピクリと動かした。

「まあ、ケチをつける気? 完璧に決まっているじゃない」

 ベアトリーチェ様は扇子を広げると、ゆったりとあおぎはじめた。

「――それで、どちら様かしら?」

 ベアトリーチェ様はにっこり微笑むとレオナの前に立つ。
 ベアトリーチェ様は頭のてっぺんから足のつま先まで、レオナを見ている。

「は、はじめまして、レオナ・ノクティスです」

 やがて挨拶を終えたレオナにベアトリーチェ様はにっこりと微笑む。

「そう、ノクティス家のご令嬢ね」

 ベアトリーチェ様が扇子を軽く打ち鳴らすと、鋭い音が響いた。

「お帰りは、あちらよ」

 ベアトリーチェ様は扇子で庭園への入り口を指す。
 微笑んではいるが、目の奥が笑ってはいないことに気づく。

「今回は親しい人だけで、気兼ねなく楽しもうと思って私が開催したの。いくら家族といえども、ご遠慮してもらっていいかしら?」

 有無も言わさない迫力にレオナは押し黙るしかなかった。

「まあ、あなただけが悪いんじゃないわ。招待状を確認もせずに、ここまで通した使用人にも問題があるわ」

 はっきりと言い切るベアトリーチェ様。これは相当頭にきているんじゃないかしら。
 レオナは自分のしでかしたことが大ごとだと、ようやく理解したようだ。顔を真っ赤にして肩を震わせている。もしくは、納得いかずに怒っているのか。

 するとそこにテオドールが走ってきた。

「リディアお姉さま~!!」

 ギスギスした空間に救世主のように思えた。無邪気なこの笑顔に癒される。

「むこうに行こうよ、美味しいお菓子があるよ」

 私の手を引いて連れて行こうとするテオドール。
 レオナは唇をギュッと噛みしめると、アレクとベアトリーチェ様に深々と頭を下げた。

「本日は大変失礼いたしました」

 謝罪を受け、ベアトリーチェ様は目を細めて小さくうなずいた。良かった、謝罪の言葉は受け取ってもらえたみたいだ。
 去り際、レオナは涙目になってキッと私をにらむ。

「……絶対に許さないんだから」

 私の横を通り過ぎる時、小声でボソッとつぶやき、この場を去った。

「誰、あの怖い人」

 テオドールにもしっかり聞こえていたみたいだ。心配そうに私のドレスの袖をつかんだ。

「申し訳ありま――」
「ちょっと、頭を上げてちょうだい」

 謝罪しようとした声はベアトリーチェ様に遮られた。

「あなたが謝る必要なんてないじゃない」

 ベアトリーチェ様の言葉にアレクも深くうなずいた。