【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~

「行こう、招待客たちが集まってきている」
「緊張しちゃうわね」

 ノクティス家にいた時から、華やかな場にはあまり参加しなかったものだから。

「気心知れた軽い集まりだから、そう気負わなくてもいい」

 アレクの言葉にホッとする。

「父と母も参加したがったが今回は遠慮してもらった。テオドールが王都に戻った時に、もう一度開催するということにした」

 そっか、テオドールはもうすぐ王都に戻ってしまうのだろう。

 テオドールだけじゃなく、アレクもベアトリーチェ様も――ー。

 一瞬、ものすごくさみしい気持ちになる。
 ここでずっと一緒に過ごせるものだと、勘違いしていたみたい。

 表情に出てしまっていたのだろう、アレクが腰を折り、顔をのぞき込む。

「リディア?」

 名前を呼ばれ、無理やり笑みを浮かべた。


「なんでもないの、行きましょう」

 テオドールの全快を祝う日だ。私のさみしさなど問題ではない。
 アレクは口の端を少し上げると、私に手を差し伸べた。丁寧なエスコートを受け、取った手は温かかった。

 私に残された時間は、あとどのぐらいだろう。

 精いっぱい生き抜いて、最期は笑って満足してこの世を去ってやる。

 それがたとえ一人だったとしても、悔いのないように過ごそうと思えた。
 
 アレクと共に会場となっている庭園に向かうと、大勢の人が集まっていた。

 え、少人数だっていっていたじゃない! ベアトリーチェ様の嘘つき~~!

 表情が固くなったことに気付いたアレクが、そっと耳元でささやく。

「どうした?」
「いえ、思っていたより人が多くて、驚いてしまって……」

 アレクは周囲を見回す。

「そうか? 小規模だと思うが」

 ぐっ、彼らとは基準が違うのだと実感した。

 花や緑に囲まれた庭園で風と光、鳥のさえずりを感じながら過ごす時間は心が癒される。
 皆が談笑し、めいめいに楽しんでいる。アレクが登場するといっせいに、注目を浴びた。
 挨拶をしようと近づいてきた人たちにアレクはあっという間に囲まれた。

 庭園には薔薇のアーチがあってその奥から、最初に姿を表したのはベアトリーチェ様だった。続いてテオドールが登場した。
 アレクはテオドールの隣に向かうと、テーブルの上に用意されていたワイングラスを手に取った。

「本日は我が弟、テオドールのために集まっていただき、感謝する。本来なら舞踏会で祝うところだが、テオドールの年齢を考えて庭園でのパーティにした。だが酒もあるので、皆が自由に楽しんで欲しい」

 堂々とした挨拶と共にアレクはワイングラスを掲げた

 テオドールのための集まりなので、彼と同じ年頃の子の姿が目立つ。立食形式となっており、テーブルには甘い焼き菓子や子供が好みそうなメニューが数多く並ぶ。