【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~

「あの、ベアトリーチェ様があんなに嫌がってらっしゃるのは――」
「ああ、王宮魔術師補佐のバルカンという男だ。何年も姉に猛烈なアプローチをしている」

 あんなに拒否するとは、脈がないように思える。

「バルカンは野心家だ。姉上の気持ちなど関係ないのだろう。周囲に注意されても、恋する気持ちは自由だと言い切る。姉上が彼を選ぶことなど、絶対にあってはならない」

 ベアトリーチェ様の態度を見ていると彼の気持ちが成就するのは、かなり難しい気がする。

「姉上もバカではない。それに俺が生きているうちは、絶対にあいつを近づけさせない」

 彼の口調から要注意人物だと感じた。

「それよりも、そろそろ時間だ」

 アレクはスッと私に手を差し出す。
 改めて見ると、髪を後ろになでつけ正装に身を包む彼は、いつもより大人っぽく見えた。
 部屋で二人きりになり、なんだか気恥ずかしい空気が流れる。

 こんなに着飾ったのは初めてで、彼はどう思うかしら? 気合いれすぎたと笑われたらどうしよう。
 アレクは優しそうな笑みを口元に浮かべた。

「すごく綺麗だ、リディア」

 真正面から直球で褒めてくるものだから、頬が赤く染まる。

「ありがとう。あなたもいつも以上に素敵だわ」

 そう、直視すると照れてしまいそうになるほど、今日の彼は魅力が全開だ。アレクもまた、私に褒められたせいか、頬がほんのりと赤く染まる。

 お互いを前に立ち、なんだか落ち着かない。
 その時、廊下から足音が聞こえた。

「リディアお姉さま!!」

 扉から顔を出したのはテオドールだった。私を見ると顔を輝かせた。

「すごく綺麗!!」
「ありがとう」

 無邪気なテオドールの登場で助かった。アレクと二人きりではなんだか恥ずかしくてたまらなかったから。

「早く行こうよ」

 それになによりテオドールの顔色が良い。それが一番私を安心させる。

「テオドール、今日の主役なのだから、早く行ったほうがいい。姉上はもう行ったぞ」
「じゃあ僕、先に行くね」

 テオドールは笑顔で手をふりながら、先に退室した。

「元気そうで良かった」
「ああ、君のおかげだな」

 そう言ってもらえるととても嬉しい。

「そうだ、こんなに素敵なドレス、ありがとう」

 私はその場でドレスの裾を少し持ち上げて見せた。

「君がしてくれたことに比べたら、安いものだ」
「あら、太っ腹ね。じゃあ、もっと頼めば良かったかしら」
「君が望むなら、いくらでも」

 私とアレクはそこで目を合わせて笑う。テオドールが顔を出してくれたおかげで、いい感じに緊張が解けたみたい。