【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~

「今度はなんだ」
「僕の全快祝いを開催するって」

 テオドールはニコニコと嬉しそうだ。

「全快? ということは――」

 私に視線を投げたアレクに伝える。

「もう大丈夫だと思うの。元気そうだし、悪いところは見当たらない。念のため癒しのしずくを数日分用意するし、なにかあればすぐ駆け付けから、心配いらないわ」
「全快――」

 アレクはぽつりとつぶやくと手を伸ばし、私の腰に腕を回す。

「ありがとう。君のおかげだ」

 耳元でささやかれた言葉に心臓がドキドキする。

 広い胸に抱きしめられ、すっぽりと収まってしまう。清涼感のあるアレクの香りが感じられて、頬が一気に赤くなった。
 腰回しに回された腕にギュッと力が入り、息をのむ。
 硬直している私からゆっくり体が離れると、アレクは優しく微笑む。

「驚きすぎだろう」

 私の頬に手の甲を滑らせた。

 そんなこと言っても、こんなに密着されたことなんてない! しかも異性!

 ドキドキしていると視線を感じる。バッと顔を向けると、ジーッと私たちを見つめるテオドールがいた。

「も、もう、テオドールの前でなにやっているのよ!」

 焦った私はアレクの胸を強く手で押して、距離を取った。

 それからすぐ翌日だった、ベアトリーチェ様から呼び出されたのは。

 朝食を取り、畑仕事でもしようと思っていたら豪華な馬車が一台停車した。聞けばベアトリーチェ様からの遣いの者で、私を呼んでいるそうだ。

 昨日も会ったばかりなのに、どうしたのかしら。いそいそ準備をして馬車に乗り込んだ。
 案内された一室にはベアトリーチェ様がソファに座っていらした。私が入室した瞬間、スッと立ち上がる。

「おはようございます、ベアトリーチェ様」

 ベアトリーチェ様は手にしていた扇子をサッと広げた。

「おはよう、リディア。――覚悟はいい?」
「えっ……」

 扇子で口元を隠しているが、目は真剣だ。なんの覚悟だというのだろう、私はゴクリと喉を鳴らした。

「いいえ、ここまできたら、覚悟はあとからついてくるわ」

 ベアトリーチェ様はうんうんとうなずいた。

「いいわ、入ってきてちょうだい!!」

 ベアトリーチェ様のかけ声を合図に、扉から大勢の人たちがなだれのように姿を表す。