【WEB版】無能才女は余命わずかなようなので、 最後に好きにさせていただきます ~クズ家族と離れたら健康になるどころか、稀代の才能が開花しました~

 自分の変化に自嘲気味に笑う。
 母が残してくれたこの小さな家は、一人で住むには充分な広さだった。それに道具も揃っており、不便を感じたことはない。

 私はスッと立ち上がり、本棚の前に立つ。
 綺麗に並べられた本は、医学書に魔法陣や魔力についてなど、すべて私好みの本ばかり。
 まるで母が、私のために準備していたのかと思うほど、趣味を熟知していた。

『王宮魔術師なんて肩書がなくても、人を救うことはできるわ』

 生前、母はよく言っていた。

 私がこの地で療養施設を訪ねようと思ったのも、母の行動を幼い頃から見ていたからだ。

 亡くなってしまったけれど、母は私にたくさんのことを教えてくれた。そのすべてが今の私に根付いている。
 本棚の一角に小道具を置いているスペースがある。

 母がずっと私に飲むように言った薬も置いていた。
 どうせ余命が決まっているならと、苦い薬も止めてしまったけれど、薬だけは続けた方が良かったのかしら?

 でも、今さらよね。

 一日一錠、眠りにつく前に飲む約束だった。この瓶の中の薬を飲み干したら、無くなってしまう。
 遅かれ早かれ、薬は尽きるのだ。

 だからこそ、自分で解決策を見つけなければいけない。
 胸の痛みが消え去った今、次にどんな症状が出るのか、わからないのだから。

 医師はクラッド病と診断したが、その病気なら心臓の痛みは日々強くなり、病気が進行すると体が痺れてくるらしい。だがそんな症状出ていない。

 不治の病なら治療法はなく、このまま寿命を迎えるのを待つしかないのかな。
 暗い考えが脳裏をよぎったので、医学書をバタンと閉じた。

「病気のことは止め、止め!! もう考えない!!」

 次は楽しいことで気を逸らそう。
 医学書を本棚にしまい、違う本を読んで心を紛らわそう。

「あら……こんな本、あったのかしら」

 本棚の下段の奥に、まるで隠れるようにひっそりとしまわれていた一冊の古びた本。
 さっそく手に取ると、表面のホコリを払う。

「魔力構造論……?」

 表紙に書かれていた文字を口に出して読む。
 パラパラとめくると細かい字でびっしりと書かれている。
 そこに書かれた一文に目が釘付けになった。つい声が出てしまう。

「魔力の抑制と封印技術――」